法 話

(112)「芝生の効用
  

大府市S・E氏提供


芝生の効用

 「ティフトン芝」をご存じでしょうか。またの名をバミューダ・グラス。いま全国各地で、幼稚園・保育園の園庭の芝生化が進められています。芝生は地面の温度上昇を抑え、ヒートアイランド現象を防ぎます。また、砂埃が立たないため近隣に迷惑をかけることがなくなります。転んでけがをすることも減るので子ども達は安心して走り回ることができます。

 これまでは、芝といえば「高麗芝」とか「西洋芝」。これらは根付くのに時間がかかり、繰り返しの踏みつけに弱いという難点がありました。園児が一日中走り回り、時には駐車場としても利用される幼稚園の園庭ですから、それでは困ります。

 そこで新方式が生まれました。この新方式は「鳥取方式」。そうそう、先日TVニュースで取り上げられていましたっけ。確か岐阜県の幼稚園か保育園だったと思いますが、何かポットの入った芝を園庭に植えていました。飛び飛びに植えられた芝生のポット、子ども達が躓くんじゃないかと、その時は思いました。

 この新方式は、ポットの入った芝生の苗を1メートル間隔で植え込んでいきます。従来の50センチ角の切り芝を貼っていく後方に比べると、大丈夫かなと思われますが、2ヶ月後には立派なグリーン・カーペットができあがるという。まさに「魔法のジュータン」。

 私が理事長職をお預かりしている「社会福祉法人・愛知育児院」が設置している「南山ルンビニ保育園」(名古屋市昭和区)は、名古屋市の「園庭芝生化」のプロジェクトに応募したところ、助成対象に選定されました。全名古屋市のトップを切って来る7月7日芝生の植え付けイベントが開催されます。

 助成の原資は「レジ袋有料化基金」とのことで、園の負担はゼロ。当日は午前10時からセレモニーがあり、10時半から芝生の植え付けが行われます。オープニングのセレモニーでは名古屋市の副市長があいさつをされ、名古屋市保育企画室の関係者も参席の予定とか。園児による「生物多様性ソング」の歌唱・体操もプログラムに盛り込まれ、「芝生を大切に育てます」の意を込めた園児による「宣誓」でセレモニーを締めくくることになっています。

 第2部の芝生の植え付けは10半開始。まず、造園業者による植え方の説明があり、園児・保護者・職員・来賓がそろって芝生を園庭に植え付けます。当日雨天の場合、降り方にもよりますが、代表者が傘をさして植え付けるか、屋内でのセレモニーのみとするか、当日の事情を勘案して決めることにしています。なお、芝生を植え付けるのは園庭全面ではなく、当然土の部分も残しておきます。

 園庭の芝生化は、太陽熱の園舎への跳ね返りを防ぐとともに、砂埃の飛散を防ぐメリットがあることは言うまでもないことですが、加えて「いのちの教育」にも大いに役立つと私は思います。カンカン照りの太陽光にさらされた園庭の表面には、蟻の他はどんな虫もいのちを維持することはできません。

 しかし、芝生が育てばその根元の土中には、ミミズや玉虫などの虫や名もない草もいのちを営むことができましょう。夏になれば、蝉の幼虫も芝生の下の深い穴から出てきて、園庭の真ん中の樹で羽化し、短い命を謳歌するでしょう。人のいのちも蝉のいのちも、長短の差はあってもその尊さにおいて違いはありません。それぞれがそれぞれの役目を果たし、精一杯生きているのです。

 園児達が裸足で芝生の上で走り回り、転げ回り今まで経験できなかった自然との“直”の接触を味わい、水やりや芝刈りを通していのちの教育の一端に触れることができれば、関係者にとって望外の喜びとなるでしょう。7月7日の芝生植え付けのイベントを楽しみに待っています。             合掌  

2010.7.3 住職・本田眞哉・記》
  
 

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