法 話

(113)「記念出版のこと」
  

大府市S・E氏提供


記念出版のこと


 

 本年5月と6月の本欄に書きましたように、私こと、本山・東本願寺より住職在任50年の表彰を受け、さらに春の叙勲で旭日双光章受章の栄誉を賜りました。このような幸せな巡り合わせは空前絶後、我が人生最大の勝縁。加えて、私ごとで恐縮ですが、私たち夫婦は結婚50年の金婚式。いわばトリプル・ハッピーの年。

 この意義深い年に何か記念になることを…、はたと思いついたのが「記念出版」。私は1996(平成8)年、学校法人同朋学園の理事長職在任中に『葩(はなびら)』を出版し。そして1999(平成11)年には第2作『萼(うてな)』を上梓しました。いずれも内容は学園運営に関わる提言や、エッセイ・法話。そして国際親善活動報告や紀行。

 その折、有志の方々が開いてくださった出版披露の会で、「第三作はいつ出版されますか」とか「どんな書名になりますか」とかいったご質問がありました。「さぁ、いつになりますかな。もちろん本の名前も考えておりません」とお答えした記憶があります。あれからもう十年余の歳月が経過。ぼつぼつ第三作を…と考えていた矢先、チャンス到来!と記念出版を決断しました。

 じゃぁ、その内容は? 了願寺の公式ホーム・ページに執筆してきた「法話」を主眼に、他の出版物へ寄稿した文書や紀行文を加えた内容にすることとしました。現在表示中のこの了願寺ホーム・ページは、2001年に立ち上げ今年で10年目。このHP法話も現在第113回。百編以上の法話全てを今回の新刊書に収録するわけにはまいりません。そこで約20編ほどをセレクトすることにしました。ところが、これがまた大変な作業。

 7年も8年も前に書いた文章、題名だけでは文の内容が浮かび上げってきません。2~3行飛び飛びに読んでも相当な時間を要します。しかも章題に合ったようにジャンル別に仕分けしなければなりません。ところが、文の内容が両方のジャンルにまたがるようなケースもあり、腕を組むことしきり。1週間ほどかけてようやく百編余の中から20編ほどを選別することができました。

 因みに、章分けは5章。 羅列すれば、「壱の章 念仏成仏是真宗」 「弐の章 日暮らしのなか まことの教えに聞く」 「参の章 住職在任五十年」 「四の章 教育談義あれこれ」 「伍の章 ヨーロッパに“アジア”を訪ねて」。本の体裁は四六判約250ページ、上製カバー・帯付きといったことになりましょうか。スタイル、ボリュームとも前作『萼』とほぼ同様になる予定です。

 ただ、内容に因んだ挿入写真に困りました。紀行文の方は言わずもがな、ふんだんにありますが、法話とエッセイの方は本文にマッチした写真はなかなか見つかりません。私自身写真にはかなり思い入れがあり、シャッターを切った枚数は数え切れないほどですが、納得のいく写真はそれほど多くありません。でも、データがデジタル化してからは、以前の「紙」の時代に比べれば、画面の補正やトリミングははるかに簡単に手元でできるようになりました。

 編集上やっかいな問題としては、送り仮名の取り扱いと用語の問題。送り仮名のスタンダードそのものが曖昧といいましょうか緩やかといいましょうか、有名作家の用例も様々。私自身もその時その時によって同じことばでも揺れ動いています。「お申し込みください」なのか、「お申込みください」なのか、はたまた「お申込ください」なのか。

 さらに面倒なのは、英・数字の処理。HP法話の原文は横書きなので、英・数字は本来の用法で何ら問題はありません。ところが、今回の出版も前二作同様縦書。年号や距離・長さ等の算用数字は当然漢数字に改めます。問題は英字。単独の大文字はそのまま縦に羅列すればよろしいかと思いますが、大文字・小文字の入れ交じった英単語や英語の単文をどうするか。多分横倒しのまま和文に組み入れるほかないでしょう。その辺りの処理は、京都・法蔵館の戸城三千代編集長と担当の長谷川小四郎氏にお任せしてあります。

 原稿は、編集ソフト「Adbbe Pagemaker」載せて送ってありますので、多少編集の手数は省けるのではないかと勝手に考えております。まだ初校の依頼も来ておりませんが、10月の出版予定はそれほど無理ではないだろうと、これまた勝手な話。いずれにしても出版できあがりが楽しみ。                                                                         合掌  

2010.8.1 住職・本田眞哉・記》
  
 

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