法 話

(152)報恩講の月 

 

 

   



大府市S・E氏提供
           


報恩講の月」




      

11月は「報恩講(ほうおんこう)の月」といってもよろしいかと。我が真宗大谷派の本山・東本願寺では、毎年1121日の「初逮夜(しょたいや)」から同28日の「(けち)(がん)日中(にっちゅう)」まで「一七(いちしち)()(にち)」にわたっての報恩講が厳修(ごんしゅ)されます。全国各地から数千人のご門徒が上山参詣し、御影堂は溢れんばかりの参詣者で満堂となります。

全国各地の末寺でも10月から翌年3月にかけて報恩講が厳修されます。ただ、本山・本願寺で報恩講が勤められている時期は、末寺は厳修をご遠慮するのが不文律となっています。当山では、毎年124日~5日の日取りで報恩講をお勤めしております。今年も11月に入ってぼつぼつ準備に取りかかりました。

また、ご門徒のご家庭の「お内仏(ないぶつ)」で報恩講をお勤めすることも数百年にわたって伝承されてきております。各寺には、地域単位で講組の組織(同行(どうぎょう))があり、その組ごとに日取りをして報恩講をお勤めする伝統があります。当山でも5組の同行組織があり、各組にはそれぞれ2560戸のご門徒が在籍。各戸のご都合もあるので日取りの日に全部が勤められるわけではありませんが、多い組は2人で回ってもほぼ一日がかり。夕方には「宿」の家で全員が集まって勤行し説教・会食。

寺でお勤めする報恩講の法要次第(()(じょう))には一定のパターンがありますが、寺ごとにそれぞれ伝統があり、全く同じというわけではありません。また、法要期間も長短いろいろ。本山は前述のように一七ヵ日が基本ですが、末寺では二~四日といったところではないでしょうか。中には一日のみの寺もあり、それぞれの寺の事情、地域の事情によってさまざま。

法要の差定も厳修日数によって変わってきます。しかし、“必須”の法要内容は厳修期間が短いからといってカットするわけには参りません。その最たるものが「如来(にょらい)大悲(だいひ)(おん)(どく)は」の和讃(わさん)。以下「身を粉にしても報ずべし ()(しゅ)知識(ちしき)の恩徳も ほねをくだきても謝すべし」と続き、四行で一首が成り立っています。因みに、この和讃は一首だけ独立の讃歌「恩徳讃」として、各種研修会等の締めくくりとして唱和することが通例となっています。

満座(まんざ)最後の法要では、この「如来大悲の恩徳は」(三重(さんじゅう))の前に「三朝浄土の大師等」(初重(しょじゅう))「他力の信心うるひとを」(二重(にじゅう))の和讃二首を加えて合計三首を用いてお勤めする方式が“三首(さんしゅ)()き”。さらにその前に「弥陀大悲の誓願を」(初重の一)「聖道門のひとはみな」(初重の二)「釈迦の教法ましませど」(二重の一)の三首を加えて合計六首でお勤めする方式を“六首引き”と呼びます。なおこの場合、三首引きの時の「三朝浄土の大師等」は(二重の二)に、「他力の信心うるひとを」は(三重の一)に、そして「如来大悲の恩徳は」は(三重の二:結讃(けつさん))となります。

因みに、当山で毎年厳修しています報恩講の差定を以下に記してみましょう。

   ●十二月四日   大逮夜(おゝたいや)     午後一時始め

     正信偈(しょうしんげ)   (しん)四句(しく)目下(めさげ)

     念仏讃(ねんぶつさん)   (ゆり) 五

     和 讃   五十六億七千万(次第六首)

     五遍(ごへん)(がえし)

     () (こう)   我説(がせ)()(そん)功徳事(くどくじ)

     御 文   聖人一流

    説 教

   ●十二月五日   晨 朝     午前九時始め

     正信偈   真四句目下

     念仏讃   淘 五

     和 讃   弥陀成仏のこのかたは(次第六首)

     五遍反

     回 向   ()(そん)()一心(いっしん)

     御伝鈔(ごでんしょう)

     説 教

十二月五日   (けち)(がん)日中(にっちゅう)    午後一時始め

  () ()   稽首(けしゅ)天人所(てんにんしょ)()(ぎょう)

  (たん)(どく)(もん)

  伽 陀   直入(じきにゅう)弥陀(みだ)大会中(たいえちゅう)

文類偈(もんるいげ)   (そう)四句目下

     念仏讃   淘 五

     和 讃   三朝(さんちょう)浄土(じょうど)大師(だいし)(とう)(次第三首)

     回 向   願以(がんに)()功徳(くどく)

     御 文   御正忌(ごしょうき)

     説 教

   ●十二月五日   お(さら)えのお勤め    午後説教終了後

     正信偈   草四句目下

     念仏讃   淘 三

     和 讃   不了仏(ふりょうぶっ)()のしるしには(次第三首)

     回 向   願以此功徳

     御 文   多屋内方(たやないほう) 

  合掌

《2013.11.3 前住職・本田眞哉・記

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