法 話

(156)土地購入談義 
 

 

 

   



大府市S・E氏提供


   

土地購入談義

  

 



 昨年10月下旬、大府市の不動産会社の社長が突然来山。用件は、当山参道入り口直近の土地が売りに出されているが買わないかとの商談。あまりにも突然のことで戸惑うばかり。戴いた資料はA4判1枚。その資料には、物件種目:売地、最寄駅:JR緒川駅、面積:383.47㎡(約115.99坪)、坪単価:40万円、地目:宅地、接道状況:西側幅員3.7mの公道に約17m接道、設備:上下水道・都市ガス等々の項目が記載されていました。併せて物件付近の地図も。

この土地は、随分以前から使用されていない様相を呈していたため、数年前に譲渡してもらえないかとこちらから地主に打診したことがありました。しかし、そのときはけんもほろろのごご挨拶でした。ところが、今回は売りたいとの意思表示、当方にとってはグッド・ニュース。その辺りの経緯が地主から不動産会社に伝えられていたのかもしれません。不動産会社の社長は、真っ先に当山に商談を持ちかけたとかおっしゃっていました。

宗教法人が不動産を売買する場合には、責任役員・門徒総代等に諮らなければなりません。不動産を取得する場合にはその可否、買い取り価格等について役員会の決議が必要。したがって、買い取りの意思決定をするには若干時間を戴きたい旨社長に申し入れたところ、快諾いただきました。そこで、当山の住職・前住職は、早速近隣各地の地価の情報収集を開始。

知り合いの不動産会社の社長にうかがったところ、一般論として地価が最も高いのは東南角地、次が道路北側とのこと。インターネット上のyahoo Q & Aには「一番価値があるのは東南角地ですね。マグロでいう大トロ、肉でいうフィレとでも言うのでしょうか、とにかく価値的には絶大です。私も東南角地を多数売却させて頂きましたが、広告に『東南角地』という四文字を載せるだけで売れました」との解説がありました。

今回商談の土地は、前記のように西側が公道に面しているだけで、高地価の条件は備えていません。しかも、住宅地向けの面積の土地は高価だが、面積が大きすぎると価格は低くなるということなので、今回のケースは低い価格で購入できるのではないかと淡い望みをかけてみたり…。一方、JR緒川駅までの距離が当山からの距離の半分ほどの土地にかかる最近の取引例では、坪単価が40万円超だったとのこと。

そうして得たデータ・資料や他の不動産業者等から入手した情報も交えて、11月初旬に責任役員・総代の皆さんにご相談。まず、当該土地を購入することの是非についてお諮りしました。参道直近であるとともにある程度の面積もあり、駐車場用地としても適地なので買った方がよいとの全員のご賛同を得ました。また、購入資金については、法人の経常会計の留保金を充てることで了解が得られました。

問題は買い取り価格。売り主の希望坪単価40万円は高い、30万円ほどが妥当な線とのご意見。近隣の取引例からみても3538万円といったところだろうとのご意見。公道に面した距離もかなりあり形状もよいので、私なら40万円で即買いだ。等々の幅広いご意見がありました。こうした役員各位から戴いたご意見や情報を元に、不動産会社と価格交渉をすることに。坪単価30万円~40万円の範囲内で決着することとし、折衝については住職・前住職に一任されました。

 そこで、119日(土)住職と前住職が不動産会社に赴き、前述の坪単価の中間値35万円を提示。社長はサラリと受けて、「先方にそう伝えます」。34日後だったと思いますが、不動産会社から電話が入り35万円ではダメとのこと。そこで、35万円と40万円の中を取って37.5万円の買い取り価格を提案。結果、則OKの入電。18日(月)不動産会社に赴いて「土地売買契約書」に署名押印するとともに、当方から手付金を支払い売買契約成立。

 1221日(土)現場測量に立ち会い、当方は何も問題ないことを確認。ところがその翌日、不動産会社の担当者がが来山、登記簿上の面積と実測面積の間に誤謬が判明したとの報告を戴きました。

   登記簿上面積:383.47㎡(116.20坪)  実測面積:444.05㎡(134.56坪)

   誤謬面積:60.58㎡(18.36坪)

〈売主〉〈買主〉双方が署名捺印した「不動産契約証書」の「土地売買契約条項」第2条には、「売主及び買主は本物件の対象面積を標記面積とし、実測面積との間に差異が生じても互いに意義を申し立てないとともに、売買代金増減の請求をしないものとする」と記載されています。しかし、差異面積が+15.8%と余りにも大きく、先方が解約をほのめかしたこともあって、不動産会社からは当方が252万円を追加して支払う解決案を提示されました。当方はこの案を受け入れ、交渉を不動産会社に一任。

 交渉はかなり難航した模様でしたが、最終的には年末の1227日(金)に交渉妥結。その結果、実測面積444.05㎡(134.56坪)を43,500,000円+2,520,000円=46,020,000円で買うことになりました。したがって、坪単価は46,020,000円÷134.56坪=34.2万円となり、当初の坪単価より33,000円安く買える結果に。気にかかる雲が心にかかった状態でしたが懸案が解決し、すっきりした気持ちで新年を迎えることができました。

 年改まって、2014131日(金)午前10時より信用金庫緒川支店において、売主夫妻と了願寺住職・前住職が出席し、司法書士臨席のもと、不動産会社の仲介を得て土地取引の決済が行われ、支払も完了し最終決着しました。後日、司法書士事務所より「不動産登記権利情報」が届けられました。「登記完了証」には、当該不動産(土地)が平成26131日申請受付のもと、所有件が移転したことが示されていました。また、「権利部」には平成26131日付けで所有権が了願寺に移転したことが記されていました。

 2月に入って駐車場整備の準備に取りかかりました。まずは施工業者の選定。知り合いの業者やウエブ上の業者3社に見積もりを依頼。見積もり入札審査の結果、「I建」と「M道路」が共同で施工して戴くことになりました。折しも消費税増税、受注工事が山積みで超多忙とのこと。従って舗装工事は3月末にずれ込む模様。当方も着工前に問題点を処理しておかなければならないのでタイミングとしてはちょうどよいのかも。

 問題点の第1は、北側隣接私有地のコンクリートブロック塀が境界線を越えて当方へ30㎝ほど入り込んでいる問題。測量の時点で当該地主も承知しており、何らかの工事をするときに撤去するとの覚え書きもあります。しかし、そのままでは地形も悪く舗装工事もしづらいことから、当方で撤去することを申し入れたところ快諾を戴いたので、撤去のうえこちらで新しい擁壁を設置することに。次に第2点。敷き地南面にはコンクリートブロックの擁壁、東面隣接地にはコンクリートブロック塀が設けられていますが、当方のアスファルト舗装をコンクリートブロック擁壁・塀にトン付けさせていただけないか了解を求めたところ、両家とも快諾いただきました。

 第3点は、駐車場全面の排水の問題。用地西面の接する公道(側溝)は100分の1ほどの勾配で北へ傾斜。用地北面に接する隣地駐車場の路面(U字溝)は同じく100分の1ほどの勾配で東へ傾斜。このU字溝もまた当方用地へ越境。そうしたこともあってか、当方の駐車場の排水をそのU字溝に合流させていただくことにご理解を戴きました。これで懸案事項はすべて解決と思いきや、新たな問題が発生。それは敷き地南面隣接の方から、排ガスの流入を防ぐため前向き駐車でお願いしたいとの申し入れ。なるほどごもっともなこと。「了願寺専用駐車場」の大看板に「右側は前向き駐車」の補助板を付けることに。また、路面標示も付けたら、と目下思案中。

合掌

 

2014.3.3 前住職・本田眞哉・記》

 

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