法 話

(192)「クアラルンプールの謎」

  

 

 

   

 


大府市S・E氏提供



  「クアラルンプールの謎」

 

 

去る213日北朝鮮の金正男氏が、クアラルンプール国際空港で何者かに殺害されました。地元のTVニュースによれば、金正男氏が自動チェック機の前に立った時、一人の女が前に立ち、もう一人の女が後ろから顔を覆うように両手を前に出したように見受けられました。その直後、前に立った女が正男氏の顔面に手を出し重ねたように見えました。人混みの中の上、画質の悪いTV放送なのではっきりとは分かりませんが、大凡の見当はつきました。

 

新聞報道などによりますと、一瞬の犯行の後、二人の女は何事もなかったように別の方向に歩いてその場を離れたのが、TV画面からもはっきり分かりました。事件後の現場周辺は、何事もなかったかのように、人の流れが繰り返されていました。地元紙によると、正男氏は「痛い。痛い。何か液体をかけられた」と訴えていたとのこと。

 

日時が経つにつれ、正男氏の動静を表すTV画像場面も増え、状況がだんだん明らかになってきました。ショルダーバッグを肩にかけ、若干足の運びは悪いものの、ほぼ正常に歩く姿。時折、診療所を訪ねるためなのか立ち止まったり、歩き出したり。再び歩き出したものの、歩行の状態が変化。そのうちに、パーテーションの奥へ。

 

診療所の中でしょうか、最後に繰り広げられたTV画面は、実に痛ましい目を背けたくなるような展開でした。パーテーションの中に入って、腹をせり出してソファからずり落ちそうな状態になって、辛うじて息をしているかに見える正男氏の姿。見守る人も介護する人も一人もいません。

 

このあと、担架に乗せられて搬送される途中に亡くなったとのこと。マレーシアの首都クアラルンプールの国際空港で北朝鮮の金正男氏が殺害されて220日で一週間、これまでにマレーシア警察が北朝鮮の旅券を持つ男一人を逮捕し、さらに4人を容疑者と特定したことで、この事件に北朝鮮の組織が関与した疑いが濃厚になりました。

 

警察は19日の記者会見で、新たに北朝鮮旅券を持つ男4人を事件に関わった容疑者とみていることを明らかにしたといわれます。いずれも事件直後に海外へ逃亡した手際のよさなどから、プロの工作員である可能性があるとみてもよろしかろうと思います。

 

金正男氏殺害に当たって、実行犯が猛毒のVXを素手で扱ったことが疑問視されているようですが、犯人がVXを顔に塗った時に生成させたのではないか、という仮説が取り沙汰されているとのこと。米専門家によると、2人が毒性の弱い2種類の薬液を別々に手のひらに塗り、相前後して顔に塗りつけ、顔面上で混合してVXを生成したのではないか、と。

 

マレーシア警察は、会見で国外逃亡した北朝鮮国籍の4容疑者が犯行直前、女2人に液体を渡し、素手に付けさせていたと明かしています。そして、2人は犯行後即座にトイレで手のひらを洗ったのではないかとの仮説。VXは皮膚からの吸収が急速なのに、なぜ2人の実行犯が生存できているのか、その答えはここにあるのではないでしょうか。女2人がVXを生成する毒性の低い異なる物質を手に付け、正男氏の顔面上で混合した可能性があるという仮説。何となく納得できそうな仮説のようです。

 

いずれにしましても不可解なことばかり。特に死亡時刻は、マレーシアの保健相によれば、顔に毒を塗りつけられてから1520分後とのこと。一方、正男氏の遺体の取り扱いはどういう方向に進むのか皆目見当がつかない、といったところでしょうか。ベトナム側は北朝鮮側の正規の遺体引き渡しを求めるであろうし、北朝鮮側はそれに応じるかどうか不明。とにかくわからないことばかり…。(2017.32

合 掌

 

2017.3.2 前住職・本田眞哉・記》

 

  to index