法 話

(193)「春談義」

  

 

 

   

 


大府市S・E氏提供



  「春談義」

 

 

 

 春らんまん。生きとし生けるもの、全て生きる力を得て、明るく動き出す時節・3月~4月。また、日常生活、社会生活の面でも変わり目のシーズンでもあります。入学試験に入社試験、卒業式に入学式、入社式。331日は2016年度最後の日。NHKの震災ラジオ放送ともお別れ、最後の日とか。41日からは新年度が幕開け。

 特に日本の社会では、331日から41日は新年度へ移行の時節でもあり、出会いの慶びと同時に別れの寂しさに巡り会う時期でもあります。また、家庭によっては大きな変革を余儀なくされるところも。別れがある一方、新しい一歩を歩み出すケース、出会いもありましょう。はたまた、年度末30日には2回目の“プレミアム・フライデイ”を体験。

 当山の家庭環境についてみてみますと、今年度は平穏。仏教系大学を卒業した私の長男が現在当山住職を勤めていますが、その夫婦の間には、既に成人した女子の内孫が1人。両親とともに寺務・家事を手伝ってくれています。掃除・洗濯・炊事と、家事も大変なようで

 30年ほど前に音楽大学を卒業し、4㎞ほど離れたところへ嫁いでいます長女の関係も、今年度は大きな変革なし。こちらの外孫は3人で3人とも男。長男・次男とも、昨年大学進学を果たし、今年度2学年に進学。長男は理系、次男は文系と道は分かれましたが、ともに2年生。三男は今年度高校2年生。来年は大学進学で、ヤッサモッサ。ただ、受験競争の実質本番は今年度後半。

 この3人の母親である私の長女が嫁いだ先は寺ではなく在家であるため、嫁ぎ先では孫の僧籍が得られず、当山にて得度を受式して僧籍を得ました。長男が小学校5年生、次男・三男が4年生で得度受式。また、三男と同時に娘の夫である父親も受式。これによって得た国の「戸籍」に相当する「僧籍」が宗門の「僧籍簿」の当山欄に搭載されました。

 そもそも「得度」というのは「度」を「得る」ということで、僧になること。「出家得度」というように、家を出て僧になるため剃髪をし、師僧についてその許可を得ること。「度」は迷いの海を渡って悟りの岸に到るということ。()(がん)から彼岸( ひ がん)へ。得度は師僧から定められ儀式にのっとって受ける儀式。その儀式を「得度式」といいます。

その得度式を受けたこと、「度」を「得た」ことを証明する文書が「度牒( ど ちょう)」。この度牒は宗門の最高権威者から発せられます。わが真宗では、この「度牒」と僧侶の証である「(すみ)袈裟(げさ)」が、大谷暢顕門首から授与されます。いわば、この度牒、僧侶の身分証明書法務の運転免許証といったところでしょうか。この得度式、本山・東本願寺で12月と1月を除いた毎月1回と8月に2回施行され、全国から受式者が上山します。

 さて、話を私の次男坊に移しましょう。次男は芸術大学を卒業し、浜松のヤマハに十余年勤務した後、現在は芸術大学の教授を勤めていますが、小学生のころ前述の得度を受式していますので僧籍を持っています。したがって、寺での法要には出仕することができます。また、大がかりな葬儀などの折りには手助けしてもらえます。

 その次男の家庭には3人の子ども。3人とも女性。皮肉なもので、次男宅には女児3人、長女宅には男児3人。偏らなくても良いのに…と思いますが、世の中思うようにはいかないようです。次男宅の長女「(あおい)」は今春高校を卒業してパテシエ修行の道を歩み始めました。自ら選んだ道をなんの迷いもなくまっしぐら。さぞ素晴らしいスウィーッ・メーカーになることでしょう。

 次女「(かな)」は高校2年生に。明朗快活なスポーツ・ウーマン。夕方遅くまでクラブ活動に熱中。そのためか「湯船で居眠りする人はよく聞くが、脱衣所で眠ってしまうのは私」とのこと。三女の名前は「(あづ)」。今春小学校を卒業し中学校へ進学。この子は両親の素養受け継いだか、術系の才能があるようです。因みに、私の孫たちの名前はひと味違っています。前述の次男の3子の他に、長男の長女の名前は「(ゆい)。長女の長男の名前は「大悟(だいご)」、次男の名前は「和丸(かずまる)」、三男は「(ひびき)

 下手な孫談義のキー・ボードを叩いている間に窓外を見れば、境内の桜は爛漫。季節の移り変わりの実に速いこと、ついこの間まで庭木に雪が積もっていたと思いしが…。高校・大学の入学試験、企業・商店等の入社試験の受験生を抱えた家庭では、変動の激しい1年だったことでしょう。重苦しい時から、らんまんの春を迎えられたご家庭もありましょう、逆に後1年頑張らなくっちゃ…というご家庭も。迷走春談義はこのへんでTHE END

合 掌

 

2017.4.3 前住職・本田眞哉・記》

 

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