法 話

(21)「報恩行」A

 当山本堂の大鬼瓦の話の続きですが、「足」といわれる部分もデカイ。長さがなんと140p。鬼本体と、左右の足それぞれ2点、計5点セットを平面に並べると、底辺が約3.5m、高さが約2mの三角形状になります。ほぼ6畳間の大きさ。

 1018日現在、大棟と東面の降り棟、そして平瓦部分の瓦と屋根土の撤去作業がほぼ完了。いずれも手作業で大変です。以後瓦下ろし作業は順調に進み、1024日には全ての瓦と土を下ろすことができました。

 屋根屋さんの作業が一段落すると次は大工工事。11月の頭連休が明けに、杉皮をはがし野地板を張り替える工事に入りました。下から見ると、ところどころ杉皮の破れ目から黒々と屋根裏が見えるところがあります。やっぱり野地板が腐って穴が開いているんだな、と思いきやさにあらず。幅10pほどの野地板を、ほぼ同じ間をあけて垂木に打ち付け、その上に杉皮を縦に止めるという工法だったのです。そして、その上に土をのせ瓦を葺くと、土と瓦の重みで杉皮が撓んで野地板の間に食い込む。したがって、急勾配の屋根全体がずれるのを防ぐことができる、というのが専門家の話でした。な〜るほど、うまく考えたものです。

 野地板を張り替える作業の中、38年前の修理工事で入れた補強材が姿を現しました。それは、正面南北両隅の屋根張りが下がるのを防ぐための補強材。直径30p、長さ10mほどの松丸太が「跳ね木」としてしっかり効いて、軒先の下がるのを防いでいるのがよく分かりました。先の修理工事で、こうした補強材を十数本小屋裏へ運び揚げたという、今はなき堂宮大工の神谷益棟梁の話を思い出して感無量。

 野地板が新しくなった部分には直ちにルーフィング「タイペック」が貼られ、青色の養生シートの掛けたれた部分と好対照を呈していました。この商品名タイペックといわれる下葺き材は、アスファルト・ルーフィングと違って、水は通さないが空気は通すという優れもので、屋根裏の「蒸れ」を防ぐことができます。

 一方、屋根瓦の手配の方も順調に進捗中。鬼瓦と獅子の製作については、高浜市の“鬼師山本”こと山本瓦製作所にお願いすることになりました。形状・寸法を採取するため、すでに下ろした鬼瓦と獅子は山本瓦製作所に預け済み。1015日の打ち合わせで、大鬼については原寸大の図面を検討しOK。降り鬼の図面については、一部修正することになりました。因みに、山本瓦製作所では、現在平成の大修復が進行中の西本願寺の鬼瓦製作も受注しているとか。

軒瓦などに付ける紋所については「立葵」であることを確認し、粘土製の原型を検証し了承。問題は大棟と降り棟の箱冠瓦。降り棟の箱冠瓦は小さいので既成の「型」で成形できるということでしたが、大棟の箱冠瓦は「型」がないので手作りということになりました。「型」を作るのに大変な費用がかかるので、50数枚なら手作りの方が低コストでできるとか。

 かくして本堂等修復工事は順調に推移していますが、ここに至るまでにはいくつかのハードルがありました。時計の針を逆戻りさせるような話ですが、御遠忌事業の発端からその流れを振り返ってみることとしましょう。 合掌

                                   【次回へ続く/2002.12.2.住職・本田眞哉・記】

                                       

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