法 話
(212)「教化伝道(10)」
![]() 大府市S・E氏提供 |
大法要勤修の歩み(2)
470名余のお稚児さんとともに1時間余に及ぶ行列に加わり、帰山した
因みに、調声とは読経や勤行の際に導師が先ず声を出して法中等の音声をそろえること。それから巡讃とは、内陣出仕者が和讃の初句を順次に唱えること。この巡讃の順序は内陣出仕者の右回り。となると内陣出仕者の席順は如何?
昔は、それぞれの寺の〝寺格〟と、住職あるいは衆徒個人の席次資格である〝堂班〟によって席順が決められていました。しかしその制度はあるものの、現今では年齢で席順を決めています。
一般参拝席から見て内陣中央正面には本尊・阿弥陀如来。その奥右側のお厨子には祖師・親鸞聖人の絵像が安置されています。その前・祖師前の畳には、住職をはじめとして6人の法中が着座。同じく向かって左側奥には本山・東本願寺の先代住職の絵像軸が掲げられています。その前の御代前の畳には同じく6人の法中が着座。いずれも尊前に向かって着座するのではなく、左右相向き合ったかたちで着座することになっています。
この席順については、控えの書院座敷ですでに式事より説明を受けていますので、後堂(内陣の裏側の廊下)で席次順に並んで出仕の指示を待ちます。定刻になりますと、祖師前外陣でスタンバイしていた楽僧が式事のQを承けて発楽。先ず乱声。三管(笙・竜笛・篳篥)揃ったところで出仕開始。式事の指示に従って1人ずつ草鞋(浅沓)を手にして後門(本尊の背後の出仕口)に上がって履き、式事の合図に従って内陣へ出仕、着座。
出仕順序は、先ず向かって左の御代前の最奥から、次に向かって右の祖師前最奥。3人目は御代前の2席目…というように以下左右交互に順次出仕します。この出仕方式を「下﨟出仕」といいます。下﨟とは何ぞや。辞書では〝出家受戒してから日の浅いもの。転じて位の低いもの〟と解説。要するに位の低い人から順次出仕するということ。前述のように当地方では、出仕者の席次は生年月日を基準にするということなので、出仕順序は低年齢から高年齢へということに。
御代前6人の出仕が完了し、祖師前も既に5人が着座、残る出仕者は1人。〝トリ〟をつとめるのは山主(住職)。法服七条下袴という最高の装束に身を包んだ山主が、後門より祖師前に進み出て首座席に向けて歩を進めます。首座席は祖師前の最前、参詣者席に最も近い席。首座席前に到着した山主は、竪畳(厚さ20㎝の畳)の方に向かい座礼(軽く頭を下げる)。右足を片足幅だけ右に開いて草鞋の間に下ろし、左足を脱いで畳に上がる。次に右足を之に揃え右回りに転向し着座。
導師(山主)は全員の着座を見届けて静かに合掌(総礼)。いよいよ御遠忌法要本番がスタート。プログラムの始めは「伽陀」。「稽首天人所恭敬」の発声(ソロ)に続いて二句目~四句目を一同唱和。因みに、伽陀とは梵語「gāthā」の音写。諷誦、偈頌、偈と訳し、仏典中に用いられる韻文。七字を以て一句とし四句を以て一偈とします。真宗では法会の時一定の曲譜を付けて伽陀を譜誦することとしています。
伽陀が終わると発楽、楽は登高座楽。三管揃ったところで係役が座具・数衣香炉箱を登高座にセット。同じく係役が山主の草鞋直し。出仕の時、竪畳に向かって脱ぎ捨てたままの草鞋を、両手で外回しに回して左右の草鞋の間を足幅分開けて直します。準備万端調ったところで、後門から式事が山主に登高座のQを発信。これを受けて山主は、起座し草鞋を履き登高座へとおもむろに歩を進めます。一旦内陣奥の方へ向かい中ほどでUターンし、弧を描くように内陣中央正面登高座へ。
登高座(礼盤)の前に直立し、本尊阿弥陀如来を瞻仰し右手で中啓(扇の一種)を襟に挿し、左足より三足前進し礼盤際に到ります。上体を曲げて左手で柄香炉の柄の中ほどを握り、上体を起こす。右手を柄に添えて柄香炉を胸の中央やや下方に保持。右足より三足後退して元の位置に戻る。柄香炉を両手で持ったままの姿勢で先ず頭を少し下げ、次に腰を曲げつつ蹲踞。静かに腰を先に浮かせ、わずか停止。立ち上がりつつ自然に頭を上げて元に姿勢に。
この「一拝」を済ませていよいよ登壇。登壇後には「三礼」。その前に登壇の作法は如何。直立の姿勢で右足を右へずらして右の草鞋を脱ぎ、その足を中間の床におろし、次に左足を脱いでそのまま前に進み礼盤の前に到り、やや右斜め向きに蹲踞。右手で中啓を襟から抜き数衣香炉箱に置く。次に正面向きになり、右掌を礼盤の中央に置き左手に柄香炉を持ったまま、左膝右膝の順に礼盤に登り中央に着座。
《2018/11/3前住職・本田眞哉・記》