法 話

(24)「報恩行」D

同じく927日関係業者退出ののち、過密スケジュールながら第6回御遠忌委員会を開催。議題は蓮如上人五百回御遠忌法要と記念事業落慶法要勤修の日取りの件。2004(平成16)327()28()を軸に、法中・楽人等の都合を聞き調整して日取りすることを決定。

同日午後1時半からは了願寺会館で降幡廣信先生の講話会を開催。講題は「了願寺御遠忌事業工事のコンセプトについて」。先生には5年前、当山の庫裡改築工事の設計・監理でお世話になりました。そして、今回の御遠忌記念事業では本堂の修復工事と出仕廊下新築工事の設計・監理をお願いすることになりました。先生は轄~幡建築設計事務所の代表取締役を勤めながら、「民家再生」をテーマに全国各地で活躍され、NHKの『人間マップ』にも出演された有名な建築家。

1時間半に亘り日本の心を大切にする建築、古材をリサイクル建築について熱くレクチャいただきました。戦後の日本の住宅建築は西欧化が進み便利さ一辺倒で、日本の伝統的な「奥ゆかしさ」や「ぬくもり」はどこかへ行ってしまった。と同時に伝統的な建築技術もそれを担う人がどんどん減っていき残念なことだとおっしゃっていました。最近になってようやくそうしたことに心ある人が気づき始め、国も伝統的建築に理解を示すようになってきたが遅きに失しているとも。

印象に残ったのは「しつらえ」の話。「しつらえ」は、もともとは「舗設」と書いたが今は「室礼」と書くとのこと。この語源は平安時代の寝殿造りに由来しているそうです。寝殿造りとは、私的住空間である「母屋」を中心にして前横三方に庇を巡らし縁側を設ける建築様式。この縁側部分が公的スペース。普段は何もないがらんとした空間。来客があるとここで接待します。

会談もありましょうし、会食もありましょう。敷物を敷き、卓を置き、華を飾り、時には几帳を掛け、日除けを設けるといった「しつらえ」をします。会食となれば、食器や箸や瓶や壺等々の調度品を整え、料理を提供したことでしょう。こうしたしつらえの実務を担当するのは主に女性だったと思われます。とすると、女性の果たす役割は重かつ大であるとともに、担当者の教養とセンスが問われたことと思われます。

「しつらえ」といえば、「名古屋造形芸術大学・カーネギーメロン大学共同展」を思い出します。この共同展は、本山の蓮如上人五百回御遠忌協賛イベントとして1997(平成9)年秋に愛知県美術館で開催。当時住職は名古屋造形芸術大学の理事長職にあった関係でこの事業に関わったわけですが、アメリカのカーネギーメロン大学の展示は全て「インスタレーション」でした。インスタレーションという表現は「設置展示」とも訳され、実物を立体的に展示する手法。

例えば、天井から吊した大きな網の中に数百個の石けんを入れて環境問題を訴えるもの、26個の椅子の座面に日本人とアメリカ人の名前やイニシャルを漢字やローマ字で書いて日米交流を象徴するもの…等々。いずれも展示が終われば全て片づけられ、形としては何も残らない。絵とか彫刻ならば、展示場から場所を他に移しても作品は形を保ちつつ存在します。

                          【次回へ続く/2003.3.3.住職・本田眞哉・記】

 

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