佛所遊履(ぶっしょゆり)

國邑丘聚
(こくおうくじゅ)

國豊民安
(こくぶみんあん)

兵戈無用
(ひょうがむよう)


『仏説無量寿経』より

法 話

(34)「年頭所感2004

           

  














 

新年明けましておめでとうございます

本年もご指導ご鞭撻賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 新年早々暗い話題で恐縮ですが、自衛隊のイラク派遣が着々と進行しつつあります。旧ろう24日には、小牧基地で小泉首相も出席して派遣部隊の「編成完結式」が行われました。

小泉純一郎首相は隊員への訓辞の中で、「皆さんの決意と使命感を最も誇らしく感じているのはご家族の皆さんだと思う」と述べています。かつて古老が「出征兵士は家の誇り」とか言っていたのを思い出しました。

また「隊旗授与式」では、石破茂防衛庁長官から「隊旗」が授与され励ましの言葉が贈られました。テレビで報道されたこの光景は、色・柄こそ違いますが、太平洋戦争末期に最前線で死守したあの「連隊旗」を思い起こさせるものでした。私と同年代以上の世代の方はそんな感じを受けたのではないでしょうか。

そして、同じく26日には航空自衛隊の先遣隊が出発していきました。翌27日にはクエートとカタールに到着し、現地での調査・調整活動を開始。さらに、今月中旬には陸上自衛隊の先遣隊もイラク南部の都市サマワに向けて派遣されるようです。

何か、いつかきた道へ日本が入り込んでゆくような感じを受けるのは私だけでしょうか。アメリカ・ブッシュ政権の「今度はグラウンドに降りてプレーを!」とか「Boots on the ground!」という要請を受けての自衛隊の派遣、人道支援とはいうもののキナ臭さはぬぐえません。文字どおり軍靴(boots)の音が聞こえてきませんか。

昨年のイラク「復興支援特別措置法」の国会審議以来、自衛隊のイラク派遣に関する議論が国会の場のみならず、テレビ討論はじめ新聞の投書欄等各方面で展開されてきました。そうしたなか、イラクへの自衛隊派遣に反対する意見としては、概ね次のように集約できるのではないでしょうか。

専守防衛」の自衛隊を“戦地”のイラクへ派遣することは憲法および自衛隊法違反である。

 フセイン元大統領が拘束されてもなおゲリラ攻撃が続く「決して安全でない(小泉首相)」“戦闘地域”へ強引に自衛隊を派遣することは、イラク特措法違反である。

 自衛隊派遣を強行すれば、さきの二人の日本人外交官殺害事件に加えてさらに犠牲者が出る。犠牲者に対して首相はいかなる責任をとるのか。

 イラクの復興のために自衛隊を派遣することは、もともとアメリカが引き起こした不当な戦争に加担することであり、軍服姿の自衛隊はアメリカ軍同様にテロ攻撃の対象になる。

 小泉首相は「戦争に行くのではない、人道支援活動に赴くのだ」と言っているが、現地ではイラク人が主体となった復興が求められている。民間企業・民間人を派遣して、雇用が発生するような復興事業や医療支援活動を展開すべきだ。

 ゲリラ戦による泥沼化に巻き込まれ、撤退の機会を失することが懸念される。国連を中心とする国際協調のもとで復興支援に参加すべきである。

 一方、

 国際社会の一員として小泉首相の言葉どおり、復興のための人道的支援としての自衛隊派遣をすべきである。

  イラクへの自衛隊派遣賛成。60年前にできた憲法のしがらみにのなか、むずかしい問題もある。現状に合うように憲法を改正する絶好のチャンス。

などという、自衛隊派遣に賛成するご意見も。

以上はマスメディアの報道の中からピックアップしたものですが、自衛隊のイラク派遣についての賛否は概ね28といった感じ。報道機関のアンケートでも78割が反対といった結果が出ているようです。

 因みに、宗教界においても自衛隊のイラク派遣に反対する声が広がっています。キリスト教の各派連合体をはじめ仏教各宗および各種団体、そして新宗教の教団も、それぞれの教えを基本として反対の声明を出しています。中には署名・デモなどの反対運動を展開しているグループもあります。

わが真宗教団も反対の意思表明をしております。浄土真宗本願寺派(西本願寺)は「即刻自衛隊のイラク派遣を中止」するよう要請文を旧ろう9日小泉総理大臣に提出。真宗大谷派(東本願寺)も同じく9日、日本政府が自衛隊をイラクへ派遣するための基本計画を閣議決定したのを受けて、次のような宗務総長コメントを発表しました。

 (前略)自衛隊は重火器を有する軍隊です。その自衛隊を今なお戦争状態にあるイラクへ派遣することは、復興支援という名目とは逆に、報復の悪循環を助長するだけのことであって、本当の意味でイラク国民の生活を回復することにはならないと深く憂慮いたします。(後略)

200411住職 本田眞哉・記》

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