法 話

(49)まきたてわろし

前々住上人(蓮如上人)、法敬に対して、仰せられ候う。

(中略)


「まきたて(種を蒔いた状態で放置すること)が、

わろきなり。

人になおされまじきと思う心なり。

心中をば申し出だして、人になおされ候わでは、

心得のなおること、あるべからず。(後略)

─『蓮如上人御一代記聞書』


 
 

53名の転任・新任の教職員の皆さん、ようこそ東浦町へご赴任くださいました。心より歓迎申し上げますとともに、東浦町の子どもたちの教育のためにお尽くし下さいますようお願いいたします。

 井村町長、長坂町議会議長にはご多忙の中ご臨席賜り有り難うございます。

 先生方には一日も早く東浦町のことを知っていただき、本町に馴染んでいただきたいと思います。町内異動の先生方も新しい地域のことをより詳しく知っていただき地域にとけ込んでいただければ幸いです。

 さて、東浦町は「やすらぎとにぎわいのある健康都市」をめざして町づくりが進められております。町当局並びに町議会のリーダーシップ、地域のみなさんのご協力よろしきを得て、着々その成果を上げつつあります。近隣の市町の住民からは、「最近の東浦町は元気があっていいね」とよく声をかけられます。少子化時代で学校の統廃合のニュースが伝えられる中、東浦町の就学人数は微増の状況であります。

 また、東浦町は歴史のある町です。徳川家康の生母於大の方の生地でありますし、国指定の縄文早期の入海貝塚の史跡もあります。その他にも町内には歴史的価値の高いポイントが数々あります。

 こうした町内のいろいろなことに興味関心をもって臨んでいただきたいわけですが、それにも増して、本町の教育について深いご理解を賜りプロとしてお仕事をしていただきたいと思います。

 昨日教育委員会会議が開催されまして、稲葉教育長より「平成17年度 学校教育に関する一般方針」が提案され、全会一致をもって承認されました。

 その内容は、近日中に教育長より学校長を通じて示されると思いますが、愛知県教育委員会の基本理念を踏まえて、「豊かな心をもち、たくましく生きる力の育成」を本町の教育の基本方針とすることになりました。

 この基本方針推進のための具体的方策として、「自ら学ぶ態度や習慣を育てる教育の推進」をはじめ6項目が打ち出されています。そして最大のポイントは、そうした方策の総括として「個別化・個性化教育の推進」というコンセプトです。

 ご存知のように、個別化・個性化教育といえば本町の教育はそのパイオニアであります。緒川小学校に始まって卯ノ里小学校、そして町内の学校へと広がった個別化・個性化教育の流れは、25年余の歴史があります。

 そうした流れの中で、主体的学習、オープン・スクール、一人学び、個に応じる教育、自己教育力、自ら学ぶ教育、問題解決学習、個別学習等々、さまざまなキー・ワードが文字になり語られましたが、それらは全て今回教育長より示された「個別化・個性化教育」に集約されると思います。

 こうした新しい教育方式が3年前新指導要領として実施される運びとなったわけです。乱暴な言い方をすれば、緒川方式が、卯ノ里方式が新指導要領として全国版になったということでしょう。緒川小学校、卯ノ里小学校の研究実践の積み重ねの成果が評価されたといえましょう。

新指導要領が導入されたとき、あちこちで話題になったティーム・ティーチング(TT)や総合学習、緒川小学校ではもうすでに1980年代の始めに実践研究されています。

 ところが、OECDから「学力」の国際比較で日本の子どものランクが下がったと発表されるや、その原因は新しい教育「ゆとり教育」にあるとかいう指摘が出て、文部科学省までが右往左往。早速中央教育審議会にその見直しを諮問する始末。

 教育は百年の計、2年や2年半であたふたする必要はないと思いますがいかがでしょう。3月27日(日)の中日新聞朝刊2面の、ガバゴンこと安倍進先生のインタビュー記事が掲載されていましたが、全く同感です。「学力」とは単に「知識力」や「記憶力」、「読解力」ではないというのが私の持論です。そうした力も含めて、「判断力」「総合力」「創造力」が備わってこそ「学力」といえるのだと思います。

 稲葉教育長は、そうした世間の動きに動ずることなく、本町の教育の歴史と伝統を踏まえて「個別化・個性化教育の推進」という方針を、自信を持って前面に打ち出しました。先生方におかれましても、この基本方針を充分ご理解いただき、本町の子どもたちを育むために精一杯ご尽力賜りますことをお願いし、歓迎のごあいさつとさせていただきます。

【平成17年度 東浦町教職員発令通知式・新任受入式歓迎のことば】

愛知県知多郡東浦町教育委員会 委員長 本田眞哉 

《2005.4.1 住職 本田眞哉・記》


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