法 話

(59)「求め続けるもの


 私たちが

 人生で求め続けるものは

 自分自身への

 深い納得であり

 うなずきにある



              平野 修『民衆の中の親鸞』より

 

このところ「三点セット」とか「四点セット」とかいう言葉をよく耳にします。その三点セットとは? いわずもがな、マンションやビジネスホテルの耐震強度偽装設計事件、米国産牛肉輸入問題、そしてライブドア事件。加えて、防衛施設庁の空調設備工事入札の談合問題が発覚して「三点セット」が「四点セット」に相成り候。

 いずれの問題・事件も一般国民には青天の霹靂。何がどうなって、どうしてこうした問題が惹起したのか全く見えてきません。のみならず、いずれのケースも数年、十数年前にその端緒があった模様で、なぜ今まで表面に出なかったのか不可解。国や地方公共団体、あるいは監査法人といったチェックシステムがなぜ機能しなかったのか、むしろこの問題方がことは重大だと思います。

 続々と今問題・事件が明らかになってきていますが、その病巣は以前から水面下にあって徐々に拡大していったのでしょう。病巣の名前は、独断と偏見で命名すれば「チェックシステム欠陥症候群」。この病巣拡大に“寄与”したのが「官から民へ」「規制緩和」「市場原理主義」というワンフレーズ・コピーに象徴される“改革”政策にあるのではないでしょうか。

 規制緩和や自由化、それに伴ってのチェック機能の民営化によって、「官」は思考を停止し、「民」からの届出・申請はフリー・パスとは言わないまでも、最終段階のチェックが形骸化してしまったのかも。2.2日付の中日新聞によれば、「構造計算審査ソフト 自治体保有わずか8% 偽造自前で見抜けず」と。自前のシステムではほとんど審査できないということです。結果的には「目こぼし」状態。「民」もその辺がねらい目で、権限委譲をよいことに不正に走ったのではないかと疑いの目が向けられることにも。

 ライブドア事件も監査法人がなれ合いだったのか、あるいはぐるだったのか、チェック機能を果たさず、法の網をくぐり抜けまさにバブル成長。1兆円に手の届きそうなバーチャル蓄財を果たし、「時代の寵児」ともてはやされたホリエモン。国の金融・経済担当者や日本経団連、果ては首相までチェックするどころか尻馬に乗って大はしゃぎ。「改革」の成果だと褒め称える始末。がしかし、この事件は識者が指摘するように「単なる個人のミスではない。制度と思想の問題なのだ」。

 米国産牛肉輸入問題も事はアメリカで起こったけれども、閣議決定の事前調査が抜け落ちていたことも事実。まさに国のチェック機能が働かなかった、というよりチェック機能を放棄したのに等しく、チェック機関をチェックするシステムが必要のようです。うがってみれば、アメリカはこうした日本のたるみをねらい打ちしたと言えなくもありません。下世話な言葉で言えば「日本はアメリカになめられとる」と。

 防衛施設庁の官製談合事件に至っては言語道断。しかも天下り人事を絡めた点数配分により業者を決めるというシステムまでできているとか。事件は今発覚したものの、かなりその“歴史”古いらしい。談合が違法だと言うことは誰でも知っているし、メイディアで他の談合事件がたびたび報道されているので防衛庁関係者が知らないはずはない。国を守るという「官」の中の「官」、防衛施設庁がなんたることか。まさに「官」の自殺行為ではないでしょうか。

 いずれの問題・事件についても関係者は自分自身への深い納得があるのでしょうか。はたまた自分自身へのうなずきがあるのでしょうか。私たち自身にも問われる課題です。

2006.2.2 住職 本田眞哉・記》       

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