研修紀行 Ⅸ

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アジア文化交流センター08夏の研修 ──

 
ヨーロッパに“アジア”を訪ねる旅 Part Ⅲ

  
パリの中心地で日本の古民家と出会い

        ベルギー・オランダの文化遺産を訪ねて⑥   

  
    
 

●思い出す30年前のフランス・ベルギー国境

823日土曜日。連泊したホテルCONCORD AMBASSADOR(コンコルド・アンバサドール)を後にして、専用バスは一路ベルギーへ向かって出発。ブリュッセルまで約300㎞の行程。ガイド嬢は変わってアニーさん。外見は全くフランス人女性。ところがマイクを持ってビックリ、流ちょうな日本語でアナウンス。聞けばかなり長期に亘って日本に滞在していたとか。ラジオのフランス講座を担当していたとも。

パリを出てから2時間ほどしたところで、いわゆるドライブ・インで小休止。日本の高速道路でも同じような状況ですが、ただ、ヨーロッパではバスの中での飲食は原則禁止とか。アイスクリームを買った団員もいましたが、乗る前に食べてしまわなければなりません。目を白黒させて飲み込んだ方も。話の続きでガイド嬢、匂いのきついものも困りものだ、と。かつて日本人客でスルメを車内で食べた人がいて、彼女は慣れていてそれほど気にならなかったが、運転手がその匂いに辟易したとか。

ほどなくバスは国境を通過してベルギー国内へ。国境といっても舗装道路はそのまま続き、検問所も無くノン・ストップ、フリー・パス。国境と思しきところには、高さ20ほどで角張ったクエスッチョン・マークを二つ組み合わせたような奇妙な形のモニュメントが建っているだけ。EUになった恩恵がここにもあるようです。そういえばこのモニュメント、前に見たことがあるような気がして、帰国後今から30年前のアルバムを紐解いてみました。そうしたら、ありました、至近距離からのモニュメントの写真が。国境検問所で停まったバスの車窓から撮ったのでしょう。素材・構造はコンクリートの打ち放し。モニュメントの根本には検問所が建っています。

30年前はドライバーが乗客リストを携えて、代表で入国審査を受けるために国境事務所へ。他のところでは係官がバスの中へ入ってきて乗客をジロジロ見たり手荷物を検査したりして、冷や冷やしたこともありましたが、ここでは出入国審査はあまり厳しくなく短時間で終わった記憶。

やっと国境線を越えると今度は両替。ECからEUへとなって今はそうしたバリアは全て解消されました。専用バスは順調に走行を続け、時計の針は正午を少し回っていたかと思いますがベルギーの首都ブリュッセルに到着。中華料理の昼食をすませ市内観光。まずはベルギー王立美術館へ。王立美術館には古典美術館と現代美術館とありますが、私たちは古典美術館へ。美術館は中央に吹き抜けがある重厚な建物。吹き抜け2階の回廊には大理石の列柱がアーチ型の梁を支えて並んでいます。

ガイドのアニーさんが入館手続きで若干手間取ったようですが、さあ2階に上がって名画鑑賞と参りましょう。1517世紀の作品がずらりと展示されています。その数の多さに圧倒されました。そうした中、ここの目玉はなんと言ってもピーター・ブリューゲル。父ブリューゲルの「イカロスの墜落」や「ベツレヘムの戸籍調査」、息子ブリューゲルの模写作品「謝肉祭と四旬節の喧嘩」素晴らしい作品ばかり。

ブリューゲルの他にもフランス・フランケンの「バベルの塔」やクエンティン・マイセスの「両替商とその妻」なども展覧されていました。また、レンブラントの有名な作品「バンベックの肖像」なども鑑賞することができ、感激。途中、アニーさんの声が急に小さくなり、周りに気を遣っている様子。どうしてかと訊けば、彼女はフランスではガイドのライセンスを持っているが、ベルギーでは資格が無く公式にはガイドができないとのこと。ともあれ、私たちは充実した佳作群に大満足。



 《次号へ続く/2008.11.2 本田眞哉・記》


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