研修紀行 Ⅹ

 ──
アジア文化交流センター09夏の研修 ──

 
ヨーロッパに“アジア”を訪ねる旅 Part Ⅳ

  
杉原千畝氏「6000人の命のビザ」ゆかりのバルト三国と
   

              サンクト・ペテルブルグを訪ねて②   
    
  
 

●チェック・インは各々で

 8月23日、日曜日。相変わらず蒸し暑い朝を迎えました。時計の針が9時を少し回ったところでメンバー全員がそろいました。団員17名と添乗員1名、計18名。近ごろは、団体さんでも飛行機の席を取ることを添乗員にお任せするわけにはまいりません。一人ひとりが航空会社のカウンターへ行って、スーツケース等チッキにする荷物を計量するとともにチェック・イン。

 以前は添乗員が全員の航空券を持っていて、航空会社のカウンターでまとめてチェック・インしてくれました。したがって機内の座席もまとまっており、団員同士が連番で座ることができました。しかし、今はバラバラに受け付けた申請を、コンピュータがランダムに席を拾うため、グループ化をリクエストしておいても、飛び飛びの席になることがあります。

事実、帰路サンクト・ペテルブルグ→ヘルシンキ→名古屋のボーディング・カードをもらう時に、私も夫婦で「window」をリクエストしたのですが、肝心なヘルシンキ→名古屋の席が列も行も飛んでいました。再トライを申し入れたら、今度は窓際とその隣の席が打ち出されました。要するに、荷物のチェック・インも、人間のチェック・インもすべて自己責任でやりなさい、ということでしょう。昔風ですと、添乗員さんは大変。特に、まとめて取った座席の割り振りには気遣いされた模様。夫婦や親密なグループは隣り合うようにと配慮し、何回も飛行機に乗る場合があれば、窓際席が満遍なく行きわたるようにしなければいけないし…。

余分なことを考えている間に、フィンランド航空AY080便は中部国際空港の滑走路へ誘導されました。エアバスA300機のエコノミー・クラスは満席。最近のニュースではヨーロッパ線の乗客数の減少が激しいとか。情報に依れば、日本航空のセントレア発のパリ便が10月で廃止になるそうですが、フィンエアのこの満席ぶりは一体何なのでしょう。

きょう(9月4日)の新聞報道に依りますと、フィンエアは2010年の夏ダイヤ(3月末~10月末)で中部空港発のヨーロッパ線を増便するという。現行週4往復を1往復増便して週5便にするとのこと。フィンエアの強みは欧州までの飛行時間が短いこと。今回も中部空港からヘルシンキまでは9時間45分。他社の欧州直行便が約12時間かかるのと比べると遙かに速い。同社のキャッチ・コピー「欧州への最速路線」もまんざら過大広告ではないようです。もう一つの利点は、ヘルシンキで欧州の40都市に同社便でコネクトできること。

 

●ハプニングあれこれ

 滑走路近くまで誘導された我が乗機、先発機の滞留のためかしばらく待ってテイク・オフ。時に午前11時30分。フィン・エアは二回目の利用ですが、快適なフライトが楽しめます。機内食も楽しみの一つ。フィン・エアの機内食は日本人にあった味付けでグー。もちろんアルコール飲料もノー・チャージ。競争が激しい航空業界、安売りを目玉とするところでは、そのうちに付加サービスをすべて有料にしようとする会社が現れるかも…。

ン?私は自分の目を疑いました。それは垣間見た前席の乗客の行動。食事が終わり、お膳が下げられる前のこと。私の席の左前、つまり私の席と対角線上にある席の女性が歯ブラシらしきものを取り出しました。洗面所へ行くかと思いきや、自席で歯磨きを始めました。エッ?口をゆすぐにはどうするのかなと思ったら、配膳された飲料水を口に含んでガラガラ! そして空になったコーヒー・カップへペッ! あっけにとられていると再びギシギシ歯磨き。また水を口に含んでガラガラガラガラ、ペッ! 何ともはや…、日本人の恥だ!

余分な詮索はさておき、乗機は何もなかったように順調に飛行を続けています。気流の状態がよいのか全く揺れがなく不気味なほど安定した飛行状態。太陽を追っかけて飛んでいる状況なのでいつまで経っても陽が落ちません。中部空港を飛び立ってから9時間45分、現地時間15時15分ヘルシンキ空港にランディング。

ヘルシンキ空港はフランクフルトの空港ほど大きくありませんが、瀟洒な空港。ところがここでまた不快なことが…。入国審査のためイミグレーションの各ブースには10名ほど並んで順番を待っていました。私の前が2~3名になった時、突然左側から車椅子が3台やってきて列の横に陣取りました。空港のスタッフかボランティアか分かりませんが、黄色のベストを着けた男性がリードして、日本人の障がい者と付き添いの人を要領よく列の最前に誘導して入国手続きをすませました。

順番待ちの行列の場合、障がい者が優先されることは私もよく承知しています。その典型的な例が愛知万博で見受けられました。ご存じのように人気パビリオンには入場待ちの人が何十人、何百人と列を作って並んでいました。ところが、その脇には障がい者用の別レーンがあって、車椅子の障がい者本人と付き添い人は長蛇の列に加わらず、現場到着即入場ができました。障害のある方はさぞ喜ばれたことでしょう。

そういった状況を承知しているのに何が「不快」なのだ、とお叱りを受けるかも知れません。順番待ちの場面での障がい者優先は充分承知しております。がしかし、並んでいる人たちの前へ割り込むわけですから、「すみません」とか「有り難う」とか「お先に失礼します」とか、ひと言声掛けがあってもよろしいのではないでしょうか。万博の時のように長蛇の列の何百人に声を掛けて通り過ぎるのはできない話ですが、数人にほんの少し気遣いすることぐらいはそんなに無理なことではありますまい。ささやかな心配りがあったなら不快な思いはしなかったでしょう。


《次号へ続く/2009.9.4 本田眞哉・記》


          to アジア文化交流センターtop