■研修紀行 U

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アジア文化交流センター01夏の研修──

  ホーチミンシティーとカンボジア
     アンコール遺跡踏査研修紀行(11)



  ●プノンペン市内見てある記

旅の第6日目は2001年8月29日。ベトナム行きの航空便が13時10分発の
VN812便から14時25分発のVN816便に変更になったため、朝はゆっくり9
時30分ホテルを出発、市内見学へ。最初は国立博物館。王宮の北側にあ
って、クメール様式の外観のどっしりした建物。1905年フランス統治時
代に建てられたもの。中には、カンボジア全土から出土した彫像や青銅
器、宮廷用具などクメール芸術の至宝がいっぱい。逸品は、6〜7世紀の
仏陀の立像、一面八臂のヴィシュヌ神像、バンテアイ・スレイの破風浮
き彫り等々。

博物館見学中に猛烈なスコール。雨上がりの道をバスで数分、メコン
河畔へ。トンレサップ川とメコン川の合流点。公園化のためか、このあ
たりの河畔は整備が進行中。川面から王宮に至るまで視界が開け、広々
とした佇まいです。夜になると屋台が出て賑やかとか。ワイド画面でVTR
カメラを回していたらポツリ、ポツリ。バスへ駆け込む。

プノンペンでの最終コースはマーケット巡り。一番目はあのユニーク
な形で有名なセントラル・マーケット。「プノンペンのへそ」といわれ
るように、プノンペンの町はこのセントラル・マーケットを中心にして
広がっている、といっても過言ではありますまい。外観はギザギザのつ
いた巨大な黄色いドーム。そのドームから四方に棟を伸ばした形の建物。
建物全体の大きさは、一辺が200mはあろうかと思われます。その屋根
の下と周辺に、貴金属から食品・衣料・雑貨に至るまで商う店が1,000
を超えると思われる規模でひしめき合っています。あまりに大きなスケ
ールと活気に圧倒されました。おそらくカンボジア経済の復興に大いに
寄与していることでしょう。


      ▲セントラル・マーケット/プノンペン

団員の希望もあって、次に行ったのがロシアン・マーケット。市の南
の端に位置していて、一種異様な雰囲気。その名の通り、外国人相手の
マーケットのようです。大きな建物の中に造られた碁盤目様通路の両側
には、骨董品・中古品がゴチャゴチャに置かれ、積み重ねられ、ぶら下
げられ…。ブロンズ像や陶磁器、古銭・古絹・古民具にバイクの中古部
品、古工具etc.ただし、骨董品はほとんどコピー。楽器やCD、本の新品
もあります。CDもこれまたコピー。聞けばUS$1。でも、“見るだけ”お
もしろい市場でした。

●ベトナム・クチの地下トンネルは凄い

ベトナム航空VN816便は3時30分タン・ソン・ニャット空港に安着。ベ
トナム再入国。いよいよ旅も最終日程、クチの地下トンネルの見学です。
空港を出て間もなく、道路は幅員50mほどに拡幅中。ほぼ道路の形を整
えたところあり、立ち退き中の家あり…といった状態。いわゆる「アジ
ア・ハイウエー」構想の道路整備の一環のようです。全線開通すれば
「新シルク・ロード」として、東西交流に重要な役割を果たすことにな
るでしょう。

しかし、工事の進行はきわめてスローペース。世界的な不況がプロジ
ェクトの推進を大幅に遅らせているようです。インターネットで見る
2001年4月15日のVNS通信の記事によれば、プノンペン―ホーチミンシテ
ィー(現R22:クチ経由)ルートのアジア・ハイウエーの工事の遅れを
ぼやく住民の声を伝えています。

空港を出てから1時間半、農家が点在する田園地帯を走り、バスはク
チの地下トンネル駐車場に到着。早速林の中の地下トンネルへと軍服を
着たガイド氏が案内してくれました。落ち葉に覆われ、全くそれと気づ
かないトンネルの入り口。ガイド氏がブロック製の蓋を両手で支えて、
身体をトンネル内に沈めていく実演をしてくれましたが、腹の出っ張っ
た私にはとてもできない技でした。


          ▲トンネルの秘密入り口

林の奥へ進むと、観光客が体験できる地下トンネルがありました。い
よいよ“入壕体験”。階段を下りてトンネルに入ると、中は非常に狭い。
もちろん腰をかがめて歩くのですが、なかには膝をつかなければならい
ほど天井の低いところも。天井といっても素堀の土。胸のポケットに物
を入れたり、首からカメラをぶら下げたりは禁物。ほんの30mを4分ほ
どかけて通り抜けたのですが、それでも圧迫感と腰痛で参った! しか
も、観光用に拡張された部分だというのに。

クチの地下トンネルの総延長は250qに及ぶとか。帰途、作戦会議室
や野戦病院も見せてもらいましたが、その名とは裏腹に質素そのもの。
また、厨房施設も地下にあるとかで、ガイド氏はアメリカ軍に見つけら
れないように煙を出す工夫を凝らした現場を案内してくれました。

南ベトナム民族解放戦線の兵士は、こうしたきゅうくつな空間でゲリ
ラ戦を戦ったのです。そして、地元の住民も戦線兵士に極秘に食料を補
給し続けたといわれます。実際にトンネルをくぐってみて、民族独立の
ために戦った、南ベトナム民族解放戦線兵士の鉄の戦意と団結力をひし
ひしと感じました。こうした解放戦線のねばり強さが、装備・物量で勝
りながら及び腰のアメリカ軍を敗退させ、民族独立を勝ち得たのでしょ
う。

今回の「アジア文化交流センター夏の研修」は、長い戦乱の時代を経
てようやく和平が戻り、復興に努めるベトナム・カンボジア両国を訪問
して、改めてお釈迦さまの「兵戈無用
(ひょうがむよう)」の教えの尊さをし
みじみと感じさせていただいた旅でした。合掌。  2002.2.15記》
                           【The end Written by S,HONDA】



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