■研修紀行 V

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アジア文化交流センター02夏の研修──

 中国・世界遺産

  九寨溝と黄龍、大足石刻群調査研修紀行 G


  酸素ボンベを買って高山病対応策

6時のモーニング・コールで目覚めた朝は8月25日日曜日。気分爽快。
きょうは九寨溝へ向けてひたすら走る移動日。10時間以上要するとの
こと、きつい道行きが予想されます。が、反面、バスとドライバーに
わが身をおまかせ、と決め込めば気楽な1日となりましょう。

専用バスは午前8時ホテル錦江賓館前を出発。1時間ほど市内を走っ
て「成潅高速道路」へ。「成潅」は、その道路の始点と終点の地名、
すなわち成都と潅県の頭文字を取ってのネーミング。「東名」「名神」
と同じ発想でいかにも東洋的といえましょうか。イタリアの「太陽の
道」などというロマンティックな高速道路名と比べて合理的といえば
合理的ですが…。

高速道路は片側3車線のゆったりとした高規格道路。制限速度は時速
120q。バスのスピード・メーターをのぞき込むと120qを少々オーバ
ー。でも、道路幅が広いためかスピード感は100q以下の感じ。



          成潅高速道路

最初のストップ・オーバーは「都江堰」。成都の西北56qの地点。
高速道路はまだ潅県までは開通していないため、都江堰ICで降りて一
般道へ。「トコウエン」。最初、ガイドの発音からは何のことかさっ
ぱり分かりませんでしたが、文字を見てな〜るほど。

都江堰は文字通り「堰(せき)」のあるところ。ガイドブックによれ
ば、ここには岷江(みんこう)に設けられた堰をはじめ、総合的な治水
・利水・潅漑などの工事跡があるとのこと。そしてこの水は成都平原
5,300
?を潤し、今なお成都はその恩恵を受けているということです。

しかし、今回はその堰も潅漑用水も見学することなく、ガイド氏に
ご案内いただいたのはスーパー・マーケット。目的は酸素ボンベをゲ
ットすること。これから標高3,000m〜4,000mの高地へ向かうため、
高山病対策として酸素ボンベが必要なのです。因みに、都江堰の標高
は760m。そうそう、チベットの拉薩へ行った時も予め名古屋で酸素
ボンベを購入してスーツ・ケースに入れて持っていきましたっけ。

都江堰を後にして、バスは一般道をひた走ります。ひた走るといっ
ても、障害なくスイスイと進めたわけではありません。道路は舗装さ
れていて悪路というほどではありませんでしたが、潅県〜映秀〜
?
と北上するうちに交通渋滞が二度三度。

 おびただしい数のバスやトラックが数珠繋ぎ。渋滞の原因はいろい
ろで、道幅が極端に狭かったり、一車線のトンネルで交互通行があっ
たり、時にはトラクターが狭い道でエンコして邪魔していたりして…。

いずれの場合も、謙譲の美徳を好まない?中国では、車が突っ込
み合いになってもなかなか譲り合うということをしない。上下線とも
全く動かなくなって10分、15分過ぎることも珍しくありません。都江
堰を出てから2時間後の渋滞では、遂に辛抱たまらず“オープン・ト
イレ”となったことも。



 中国は多民族国家

岷江沿いの道路はだんだん山岳地帯に入って行く感じで、対岸には
見上げるような山が迫り、路肩を踏むバスの車輪の下は断崖絶壁。
ヒヤリヒヤリ。ガード・レールはなく、ガード・ブロックの埋め込み
作業が進行中。

 時計の針は午後1時半を指していますが、未だ昼食にありつけない
ようです。かなり狭くなった岷江の対岸には少数民族の集落。羌(チ
ァン)族かな? 山肌と同じような色をした家々が斜面にへばりつく
ように建ち並んでいます。

 遠目に目立つのは白い丸。1軒に1個。そう、BS放送受信用のパラ
ボラ・アンテナのようです。いや、まてよ、重慶市内で聞いたガイ
ド氏の説明によれば、中国では一般市民がパラボラ・アンテナでBS
放送を受信することは禁止されているとのことだったのに…。ある
いは山間部の少数民族にはBS受信が特別に許可されているのかも。


    ▲パラボラアンテナが目立つ少数民族の集落

 そもそも中国は56の民族から成る多民族国家。うち92%が漢民族。
そして、その他の少数民族55のシェアは8%。少数民族といっても
その人口はピン・キリで、最多1,560万人のチワン族から最少
2,300人のロッパ族までさまざま。

 中国政府は爆発的な人口増を抑えるために「独生子女政策」を推
進中。いわゆる「一人っ子政策」。「子どもを産むのは一人でスト
ップすべし」というお上のお達し。この一人っ子政策は1982年に国
策として確立されたものですが、これがなかったら20年間に現在よ
り3億人近く人口が増加していただろうという見方が有力。

 ただし、この政策の対象は漢民族のみで、少数民族には適用され
ません。少数民族のシェア8%ということから見れば至極当然のこ
とといえましょう。 しからば、漢民族の人が少数民族の人と結婚
した場合、2人3人と子どもを設けてもいいのでしょうか。ガイド氏
に訊ねてみましたが、答えは「…?」。因みに、この政策は2002年
9月1日から法制化されたそうです。
           《次号へ続く/2003.3.30本田眞哉・記》

 


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