■研修紀行 T

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中国仏教史跡踏査の旅──
      
天台山・普陀山 雨中の巡拝行(その3)

 ●懸案の国清寺参拝も雨の中
 

 雨の音で目が覚める。8月24日の朝。カーテンを開けると猛烈な雨。屋
根から滝のように雨水が流れ落ち、国清寺の六角九層の隋塔が雨にかすんで
見えます。ははあ、このホテルは国清寺のすぐ近くに位置しているんだな、
と分かりました。因みに、ホテルの所在地は「浙江省天台県国清寺旁」とな
っていました。なるほど。

 さあ、いよいよ今年度研修旅行の目玉の一つ、国清寺参拝の時がやってき
ました。持ち物はカメラと傘。身軽に徒歩で出発。幸い雨もあがりました。
5分も歩くとぶかんばし豊干橋
(ぶかんばし)に到着。橋を渡ると正面の壁に「陏
(ずいだい)古刹(こさつ)」と大書。国清寺は今から1,400年前、隋の開皇18年
(598年)の創建。「国清寺」の寺号は、天台宗の開祖智者大師が「寺若成国即
清(寺もし成れば、国すなわち清からん)」という夢告を受けたことに由来す
るとか。

   
           
▲天台山国清寺 入り口

 山門をくぐり参道を進むと、一段高いところに弥勒殿。中国の弥勒菩薩は
ツルツル頭の布袋さんだ。満面に笑みをたたえ、ユーモラスにどっしりと座
ってござる。しかもここの布袋さんは金ピカ。そして布袋さんの背後にまわ
ると、そこには剣を持った韋駄天
(いだてん)さんの像。このパターンは弥勒殿
の定番。

 次の建物は雨花殿
(うかでん)。一般的には天王殿と呼ばれ、中には四天王が
祀られているのですが、国清寺では「雨花殿」。それかあらぬか、ここへ来
たら雨が降り出しました。四天王像は目下修復工事中。

 雨花殿を抜けて石段を登ると、そこは大雄宝殿。正面の扁額「大雄宝殿」
は趙樸初中国仏教協会会長の揮毫によるもので、異例の縦書き。殿内に入る
と中央蓮華宝座の上には金色の釈迦如来座像。左右には迦葉
(かしょう)と阿難
(あなん)の同じく金色の像が侍立しています。殿内左右両側には十八羅漢像が
ズラリ。寺務所に喜捨をし、本尊正面で団員一同声高らかに勤行。パーリ語
の三帰依に続いて三誓偈・短念仏・回向の差定
(さじょう)でお勤めをし、団員
一人ひとりが線香を尊前にお供えさせていただきました。

 このころから雨が強くなり、堂内は暗く樋のない堂宇の雨垂れの音でガイ
ド嬢の説明の声もかき消されがち。本尊の背面に回ると、そこには南海の普
陀洛の山々と波浪を背景に慈航観音が佇立していました。

 大雄宝殿を出て裏山の階段を上ったところに見晴らし台のような楼があ
り、三つのま新しい碑がが建っていました。聞けば日本天台宗の総本山延暦
寺が建立した碑とのこと。天台宗の創始者天台智者大師の碑を中心に、向か
って左側に日本の伝教大師最澄の碑。ただ、碑の正面の題字は「最澄大師」
となっていました。右側には伝教大師の師・行満
(ぎょうまん)大師の碑。これ
らの碑は1982年建てられた由。「天台座主恵諦敬白」の文字が見えていまし
た。

   
            ▲「最澄大師」の碑 

 周知のように、伝教大師最澄は遣唐使とともに入唐し、天台山で道邃
(どう
づい)
や行満について天台の法門を学びました。その後日本からは円仁、円
修、円珍等が入唐して台密の教学を修学。さらに鎌倉時代には栄西禅師もこ
の地で修行しており、天台山は日本仏教の淵源の地でもあります。

 相変わらずの雨の中、大雄宝殿前の階段で団員一同傘を差して記念撮影を
し、国清寺に別れを告げました。門前の川は増水し滔々と流れていました。
時に2000年8月24日午前10時30分。ここに懸案の天台山国清寺参拝の目的を
達成することができ、安堵感。いささか大げさな表現になりましたが、それ
には訳があるのです。

 かつて、アジア文化交流センターの事業として天台山参拝を計画しました
が、文字通り雨で流れたことがありました。それは1988年のこと。「中国仏
教の古刹天台山とラマ教の聖都ラサ王宮寺院巡拝讃迎の旅」と銘打った研修
事業。2班に分かれて日本を出発。民航機の遅延やフライトキャンセルがあ
ったり、高山病にかかったりして大変だったものの、チベット・ラサの寺院
往詣は一応円成。

 ところが、天台山地方は豪雨のため立ち入りできないとの情報が入り、私
たち第2班は天台山参拝を断念せざるを得なくなり、杭州に逗留。先発の第1
班は、天台山に着くころ豪雨に見舞われ、辛うじて国清寺参拝はできたもの
の、道路決壊や洪水でバスは迂回に迂回を重ね、悪戦苦闘して脱出したとの
ことを後日談で聞きました。というわけで、今回は12年ぶりに雪辱を果たし
たという感じ。
                  【To be continued. Written by S,HONDA】


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