■研修紀行 X

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アジア文化交流センター04夏の研修──

 中国・高原都市

  麗江・大理・昆明の少数民族との出会い B


 

 ●中国流サービス

 中国の航空業界は、1988年に国営中国民航1社から6社に分割民営化されたことにより、機材も運行ノウハウもほぼ「世界標準」の域に達しつつあるようです。以前は1時間や2時間の遅れはザラで、最高28時間遅れも経験した私としては隔世の感一入。時には、政府高官に機材を“乗っ取られ”たためにフライト・キャンセルになったことも。

 水平飛行になってしばらくすると、食事のサービス。中国の航空会社の機内食はどうも苦手。が、名古屋発の便ならば名古屋のケータリングで調達するから、今回は日本食だろう、心配ない、と踏んでいました。ところが、電子レンジで調理の準備をする音とともに、何となく中国料理風の香りが漂ってきました。いやいや、名古屋から積み込んだ機内食じゃないぞ、中国から積んできたのだ…。しかし、食してみると結果はグー。私の口にも合う、意外とおいしい食事でした。ごちそうさま。

 ちょうどそのころドリンクのサービスが始まりました。普通は食事の前にドリンクサービスがあるのに…。まだこのあたりがワールド・スタンダードに達していないのかな? 「いや、これが中国流。いずれチャイニーズ・スタンダードがワールド・スタンダードになる時代がくるよ」と誰か言ったとか、言わなかったとか。現在の中国の破竹の勢いからすれば、マジでそうなるかも。ケ小平(テン・シャオピン)氏の「先富論」を受けて、“先富者”がぐんぐん引っ張る中国経済の発展は天井知らず。「21世紀は中国の時代」という論調も現実味を帯びてきました。

 食事を済ませうとうととしていると、もう乗機は着陸態勢に入りました。名古屋を飛び立ってわずか2時間、やはり中国は近い国。めざすは上海の浦東空港の滑走路。上海の黄浦江の東側の開発地域に1999年9月にできた新しい空港。午後2時10分にランディング。

一方、以前からの街中?にある虹橋空港も併行して運用中。新空港開港当初は、航空会社によって着陸空港を振り分けられていたようで、自分の乗った航空機がどちらの空港に着くか分からず、乗り継ぎ便に間に合わなかったという笑い話もあったとか。


 ●繭と生糸と真綿と飲茶

 そういう私たちも、上海到着後の乗り継ぎ便は虹橋空港から。虹橋空港まではバスで移動。所要時間は約1時間半。国内線のフライトは19時5分発。1時間前に空港に到着しなければいけないが、それにしても時間はたっぷり。そこで、第2昼食?の形で軽く飲茶料理をいただくことにしました。名古屋出発前に添乗員の三和田君から提案がありました。

 バスは高速道路を下りて、工場が建ち並ぶ地域へ。こんなところにレストランがあるのかなといぶかっていると、ある工場らしき敷地にバスは乗り入れました。やはり工場だ。生糸の工場のようです。現地ガイドの誘導で、生糸を紡ぐデモンストレーションを見学。卵から蚕が誕生し、蚕が桑の葉を食べて繭を作っていく過程の説明を聞いて、子どものころ桑の葉を取ってきて蚕を育てたことを懐かしく思い出しました。

 繭から細い1本の糸が引き出され、紡錘に巻き取られて繭がだんだん薄くなっていくのを見ていると、何となく哀れを感じました。「鶴の恩返し」の機織りのように。しんみりしていると、「こちらへどうぞ!」の声。

 次は真綿布団作りの実演。真綿の固まりを数人で引き延ばして布団の大きさに。女性は頷いていましたが、われわれ男性には要領を得ない話。あれこれ製品の話もあって、最終は「真綿布団のパックはいかがですか」とお定まりのコース。団員も流れに乗ってゾロゾロ。旅の始まりにあんな大きなかさばる物を買ってどうするのかと思いましたが、心配無用。品物の受取は帰国時の上海空港で、ということ。よくできた話。

 そういえば、同じような商法に乗って痛い目のあったことを思い出しました。何年前の中国旅行だったか、どこへ行った時だったか記憶が定かでありませんが、あるホテルで石の印鑑を注文して代金を払いました。篆刻(てんこく)された印鑑は、帰途も同じホテルに泊まるので、その時受け取るという約束でした。ところが、鉄道トンネルの中で落盤事故があったとかで、帰路のルートが急遽空路に変更されました。そのため、受け取るはずのホテルは文字どおり飛び越して帰国するという羽目になり、注文した印鑑はいまだに受け取れずじまい。

 余談はさておき、見学を終えたその工場の2階が何とレストラン。いただいた飲茶料理は結構おいしかったで〜す。日通旅行が負担したか、現地のエージェントの負担なのか、そこまでは詮索しませんが、フリーの特別サービス。だから、なおさらおいしかったのかも。ごちそうさまでした。《次号へ続く/2004.10.30記》


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