■研修紀行 Y

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アジア文化交流センター05夏の研修──

 中国・雲南

  シャングリラ《中(ちゅうでん)》を訪ねて @
 

集中豪雨で山岳道路が寸断

アジア文化交流センターの2005年度夏の研修は、中国・雲南省の少数民族の郷を訪ねる旅を企画しました。名づけて −「シャングリラ(桃源郷)を訪ねて」− 麗江・中7日間の旅

ところが、出発直前になって日通航空の三和田君から緊急メールが入りました。何事かと思いきや、麗江から中甸までの約100kmの山岳道路が豪雨のため寸断されたとのこと。乗用車は辛うじて通れるものの、バスの通行は当局より止められているので、陸路甸に入るのは無理とのこと。
 
 そういえば、前日のラジオ・ニュースで雲南省で集中豪雨があり、がけ崩れで道路がズタズタになったと報じていましたっけ。雲南省も広いところだからとあまり気に留めていませんでしたが、まさかわれわれが行くコースが直撃されたとは…

いずれにしても対応策を講じなければ、ということで三和田君とよりより協議しました。その結果、上海から昆明経由航空便で直接甸に入る他ないという結論になりました。当初の計画では、上海から空路麗江に入り、麗江見学の後一泊してバスで甸に向かうことになっていました。途中、長江の上流である金沙江の激流や大渓谷湾曲などを見学しつつ、高山病対策も含めて徐々に海抜高度を上げていく計画でした。

 甸は海抜3200m〜3300mの高地、高山病にかかる恐れは充分にあります。特に空路入りした場合、一気に希薄な空気の中に降り立つと、身体が順応できず、脳が酸欠状態となり頭痛・吐き気などの症状をともなって高山病を発症します。十数年前、チベットのラサを訪れ時も成都からラサへジェット機で飛び、ホテルに着くや否や団員の半数が高山病で倒れたことがありました。

しかし自然災害のこと、誰に文句を言うわけにもいかず、空路甸入りする他ありません。団員各位には状況をお話してルート変更について了解をいただくようお願いいたしました。加えて、麗江経由分の経費はキャンセルがきかず、新規のエア・チケット代約1万数千円を団員各位に負担していただかなければならず、これまた新たな難題。このことも併せて縷々説明しお願いしましたところ、渋々ながら?ご了承いただきました。やれやれ。

今回の旅はのっけから躓きが発生し、旅の安穏が気になるところでした。しかも、7月から8月にかけてわれわれが出発する直前まで、世界各地で航空機の墜落や鼻つき事故などトラブルが連続して発生していましたのでヒヤヒヤ。今まで掛け捨てに終わっていた旅行傷害保険が、今回こそは役に立つのかなという、変な期待?と不安も。


旅行傷害保険あれこれ

旅行傷害保険といえば思い出すのが今年2月17日のこと。そう、中部国際空港・セントレア開港の日。知多シニアライオンズクラブの有志グループでインドネシアへ行く計画を立てました。朝9時55分発のガルーダ・インドネシア航空GA889便に搭乗するため、7時半に3Fの国際線出発ロビーに集合。ところがなかなかチェック・インが始まらないのでおかしいなあと思っていると、添乗員から出発が8時間ほど遅れるとのインフォメーション。

理由は機材繰りのためとか。日本へ向かう予定の飛行機がジャカルタあたりでエンジンに鳥を吸い込んだとかで航行不能に。エンジンを取り替えるためか、代替機を調達するためか、とにかく時間を要するということらしい。さあ、8時間どうすべえ。空港内を見学するか。セントレア温泉にでも入るか。電車で常滑市内まで行くか。一旦家へ帰るか…。etc. 

 議論百出の中で、「旅行傷害保険の中に、確か『遅延補償』というのがあったぞ」とある物知りの発言。添乗員も加わって「あるある、8時間遅れなら間違いなく補償金が出るはずだ」とのご託宣。ただ、遅延補償の特約が加入済みの旅行保険の中に謳われているかとなると皆自信がない。さりとて虫眼鏡でも読みづらい契約書を見直す気力もない。そこで、目の前にある旅行傷害保険のカウンターで5千円払って新規に加入すればよいのではないか、確実に遅延補償をもらえるのだから、ある人が提案。私は加入しなかったが10名以上のメンバーが手続きをしました。

 さてそれからが大変、時間つぶしにスカイ・デッキへ出たものの寒風吹きすさび身も凍えるほど。屋内に戻ってセンターピラーの最先端まで歩く。最先端3Fの展望レストランで食事でもと思ったのですが、まだオープンしていない。オープン後も予約で一杯とか。4Fのスカイタウンへ引き返しちょうちん横丁へ。芋を洗うがごとき人ごみ。目ぼしい食堂は1時間待ち。展望風呂も1時間待ち。飛行機の乗降客より見学客のほうがはるかに多い。7:3の割合か。何とか軽食にありついてやれやれ。以後4時ごろまで時間つぶしにセンターピラーの3Fプロムナードを行ったり来たり。

 以上が私の行動記録ですが、他のメンバーも似たり寄ったり。展望風呂に入った人あり、弁当のすしをベンチで食べた人あり、常滑市内まで出かけた人あり…。後で分かったことですが、この時の行動が保険金の支払いと密接な関係があったのです。

 文字通り帰国後の後日談ですが、遅延補償金を保険会社に請求するのに皆さんかなり手こずったようです。まずは添乗員からガルーダ・インドネシア航空の遅延証明書が届きました。そのほかに添える書類がいろいろ必要だったようです。定かではありませんが、住民票だとかパスポートの写しだとか…、もちろん請求書のフォームもしっかりしたものだったようです。

 加えて、8時間の間に費やしたお金の領収書が必要とかで、そんなレシートはまず保存していばいし、タクシーで自宅へ帰ったならいざ知らず、風呂へ入ったり食事をしたくらいでは出費は5千円にも満たないでしょう。さて、誰か遅延補償なる保険金の支払いを受けた人がいるのでしょうか。以後、どなたも口を噤んでいますので分かりませんが、どうも大方は手続きの煩雑さとレシートの問題でギブアップしたのではないでしょうか。合掌
《次号へ続く
/2005.9.10記》



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