■研修紀行 Ⅵ

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アジア文化交流センター05夏の研修──

 中国・雲南

  シャングリラ《中(ちゅうでん)》を訪ねて ⑦
 

●「納?海」は乗馬で散策

 8月25日、ホテルで昼食をすませ1時半出発。バスは納?海(なぱかい)へ。あいにくの雨。ガイド氏のたどたどしい日本語の解説によれば、「納?」とは「森の後ろ」の意とか。「海」は湖。ここチベット族の居住地は大陸奥地の高原。もちろん海はありません。海がないだけに海への憧れは一段と強く、広い水面があれば「海」と呼びたいという。むべなるかな。

 バスは30分ほど走って納?海に到着。草原の奥に広がる水面。雨は止んだものの、どんより曇った空のもと、青く澄み切った水面は望むべくもありませんでした。この時期、夏から秋にかけては、約8割が湖面、あと2割が草原といったところですが、10月から3月の乾期には完全に干上がって「草原の海」となるそうです。

 駐車場の一隅に自然石を組み合わせて建てられた巨大なモニュメント。おどろおどろしい岩組みの中央に納?海を紹介する大石板がはめ込まれていました。そこに記された「簡介」文によればここは海抜3,260m、1981年に人民政府によって自然保護区に指定され、2004年には「国際重要湿地」に「列入」されたとのこと。そしてこの碑の建立は「2005年6月25日」とあります。そう、ほんの2か月前のこと。

 さて、どのようにしてこの広大な草原湖を見学するのかと思っていると、団員が一人二人と馬に乗って湖面の方へと向かいます。雨合羽を着けて、振り落とされまいと必至に鞍の金具にしがみついて、こわばった表情で歩を進めていきました。おそらく、団員のほとんどは乗馬の経験はないでしょう。ただ、チベット馬は小柄で、馬上で揺られてもそれほどの恐怖感はありません。

 馬子の歌声が山にこだまし、カランコロンとベルの音がするなか、草原から沼地に入り、また草地へと、繰り返しながら進みます。時には馬の足が20㎝以上泥の中に沈むことも。遠くには草をはむヤクが2~3頭。日ごろの喧噪から離れ、時を忘れたのどかなひととき。

 最奥の大きな草原の「島」で一同“落馬”いやいや“下馬”して記念撮影。スルーガイド嬢、声を大にして曰く、「馬から下りたら馬の後ろへ寄らないでください、馬の前へ行ってください」。何回も叫び続けていました。そう、馬の後ろ脚は後ろ向きに蹴る習性があります。しかもその力は凄い「馬力」。

子どものころ、近くの神社のお祭りで「駆け馬」の催しがありました。その時、「馬の後ろ側には絶対に近づくな」と古老から注意されたことを思い出しました。中国も日本も馬の習性は同じなのでしょう。記念撮影を終えた時、湖面の方で何やらバシャバシャと音が。見れば2頭の馬が水しぶきを上げて湖の中を走っています。チベット族の若者が競争するかのように馬を駆って全力疾走。

山に囲まれた大草原湖、「森の後ろの海」のネーミングのワケが分かりました。山を越え、森を抜けると憧れの“海”があるのだと。その大草原湖での見学はユニークな「乗馬体験観光」でした。次なる観光先は「属都湖」。




●チベット族の親子絢爛コスチューム

バスは納?海を後にして一旦市内に入り、方角はよく分かりませんが再び郊外へ。道路は次第に悪路になり、ついには未舗装の泥道。前の車の跳ね上げる泥しぶきがわがバスのフロント・グラスを曇らせ、まるで曇りガラス。ワイパーの描き出す扇形で辛うじて視界を確保。

市内から約1時間、ようやく属都湖に到着。ン?入り口の案内図入りの看板には「碩都湖」とあります。日通航空の日程表では「属都湖」。この観光地、最近売り出したのかガイドブックには載っていません。中国雲南省発行のパンフレットにも載っておりません。インターネットで探してもなかなか情報が見つかりません。

どちらが正しいのかといぶかりながら歩を進めると、園内の案内標示には「属都湖」と示され、ますます混乱。ローマ字の“ルビ”は「Shudu Lake」。まぁ、いいッか、それより問題は風光だ。案内標示の矢印に従って進むと、遠くに湖面らしきものが見えてきました。

湖岸に近づくとにわか雨。カメラを雨から護りながら湖面に目をやると、遠くの方に明るい陽光。次第に陽光が近づいてきて、水面の群青と草の萌黄色が鮮やかに浮かび上がりました。陽光の去らぬ間にと、一同揃って「ハイ、チーズ!」。

と、後ろでカランカランとカウベルの音。見れば数頭の黒毛牛が草をはんでいました。そのお陰か、畑の中の雑草はまるで芝刈り機で刈り込んだよう。因みに、畑の作物はといえば、水芭蕉の葉を大きくしたような葉が根元に数枚、そこから伸びた長さ70~80㎝の茎の天辺に黄色の花。ちょうど「まんさく」の花を束ねたような花。この植物の名前をガイド氏に尋ねてみましたが、質問の意味が分からなかったのか、名前を知らなかったのか要領を得ず、結局分からずじまい。

その畑の近くにはテント小屋。チベット族の小屋だと思われますが、屋根面や側面には唐草模様や独特のカラフルな図柄が描かれていました。そのテント小屋から幼子を連れた女性が一人出てきました。髪は三つ編みか四つ編みか、長く垂らして腰まで。髪飾りは赤青黄色の“すだれ”とビーズ。加えて独楽の形をした赤いかんざし。コスチュームは朱色と黄色の錦織? 幼子も赤青黄色を基調とした、文字では説明できないほどカラフルであでやかなコスチューム。

 推測するに、どうも子どもさんの「御用足し」だったようです。>それとは知らず、こちらは絶好のシャッターチャンスとばかり、200㎜望遠でパチリパチリ。失礼しました。

《次号へ続く/2006.1.19記》


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