■研修紀行 Ⅵ

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アジア文化交流センター05夏の研修──

 中国・雲南

  シャングリラ《中(ちゅうでん)》を訪ねて ⑨

●碧塔海は自然保護区

 一夜明けて8月26日金曜日。快晴とまではいかないけれど、まあまあの空模様。きょうは「碧塔海」観光。もちろんこの地に「海」などありません。前述のように雲南の人の海に憧れる思いからのネーミング。碧塔海は、東西3,000m、南北700mの広大な高原湖。標高3,500m。ここはシャングリラ(桃源郷)と呼ばれる伝説の地。今は「碧塔海自然保護区」。

 バスは中甸のホテルを出発してから40分ほどで碧塔海の駐車場に到着。ここで保護区専用バスに乗り換えるとのこと。出発前のインフォーメーションでは、4㎞ほど歩いて湖に至るとのことでしたが、専用バスで湖畔までアプローチできるようになったようです。したがって、ホテル帰着も予定より早くなりそう。

 保護区専用バスは、数年前に訪れた九寨溝で乗った低公害の「無煙バス」かと思いきや、フツーのジーゼルエンジン・バスでした。だったら私たちが乗ってきたバスをそのまま乗り入れさせてくれたらよかろうものを、と恨み節。乗客は多国籍。しかし、ガイドアナウンスは中国語オンリー。

 終点のバス・ストップは湖面よりかなり高いところにあり、湖畔まで降りるには100段超の階段を下りなければなりません。酸素希薄なご当地、「往きはよいよい、帰りは怖い」の伝にならなければよろしいのですが…。心配をよそにわがパーティーの高齢者群、コトコトと階段を下りて草原の木道へ。

 草原湿地帯の中に設けられた木道を、花を眺めながら、清流の音に耳を傾けながら、時にはカメラのシャッターを押しながら、遠くに見える湖面を目指してのんびり歩くのもまた一興。歩くこと約30分、湖畔に到着。

左側は松や杉や広葉樹の林、右側は水面が展開する遊歩道をさらに進むと、日本の風景と見まがうポイントも。樹齢50~60年の曲がりくねった松の木が、湖岸から水面を這うようにせり出していました。網の目のような小枝のシルエットが印象的でした。

バス・ストップから1時間ほど歩いた地点に船着き場がありました。折しも甍をぴんと張った屋根付きの船が入港。ここが地図上で湖のどの辺りになるのか分かりませんが、雑然としながらも建家も数棟ありトイレなどもあった模様で、波止場の町かなという感じ。

「『碧塔海』は、湖の周りの緑の林が、5,000m級の雪をかむった白い山々を背景に碧(みどり)の塔のように見えることからその名が付けられました。」とは現地ガイド氏の説明。しかし、現地で見た光景からはそんなイメージは湧きませんでした。碧の林はありましたが、「塔」というふうには見えませんでした。曇り空だったせいでしょうか。また、ガイド誌等によると当地はシャクナゲの名勝地とか。時機を逸したのか、残念ながら私の目には入りませんでした。

波止場の地点で折り返してバス・ストップへ。同じコースを戻る途中、遊歩道脇に一人の男性現地チベット人。カバンの中に手を入れながら何やらボソボソ。何を言っているのか分からないので、カバンを指さして訊ねたら、彼が取り出したのは松茸。なるほど。

昨夜の「松茸御殿」のことを思い出しました。わがパーティーのメンバー2~3人も交えて値段をたずねながらひやかしたものの、日本入国時に検疫にひっかかったらパーだ、とその場を離れました。彼の言い値も失念。

コースの最後、“心臓破りの階段”。ここを登り切らねばバス・ストップにたどり着けません。標高3,500m、慌てず騒がずゆっくりゆっくり。途中3回ほど休んで“完走”。数年前訪れた黄龍のことを思えば距離が短いので大丈夫と思っていましたが、寄る年波のためか、体力が衰えていることを実感。《次号へ続く/2006.3.18記》


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