■研修紀行 Ⅶ

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アジア文化交流センター06夏の研修──

  ヨーロッパに“アジア”を訪ねる旅

 クーデンホーフ光子ゆかりの地を巡って ②




●ヨーロッパに三つの日本庭園

最初の庭園は1998年、チェコのカルロヴィ・ヴァリ(ドイツ名:カールス・バード)に「花・ベルツ記念日本庭園」が、ベルツ生誕150周年記念事業として築造されました。ここは、明治期に西洋医学の日本導入に貢献した外国人医師エルウイン・ベルツと結婚した日本人「花」ゆかりの温泉地。なお、カルロヴィ・ヴァリ市は、温泉保養地を共通項に群馬県草津市と姉妹都市提携を結んでいます。

二番目は、前出のドイツとチェコの国境の町バイエルン州のフルト・イム・バルト市に2001年に築造された「パン・ヨーロッパ記念日本庭園(交龍の庭)」。クーデンホーフ光子の次男リヒヤルト・クーデンホーフ・カレルギーが提唱したパン・ヨーロッパ運動を再確認し、日本的美しさと調和によって平和と共存への願いをこめて築造されたもの。当市のラインホールド・マホ市長はパン・ヨーロッパ運動の積極的な支持者。残念ながら20059月に63歳で逝去。

もう一つの庭園は2003年、スイスのグシュタードに築造された石庭「クーデンホーフ・リヒャルト記念庭園」。ここは光子の次男リヒヤルトの眠る地。リヒヤルトは第一次大戦後、次の戦争を危惧して国境のないヨーロッパを平和的に目指すパン・ヨーロッパ運動を提唱しました。その運動は、いまEUに結実。彼の遺徳を称え、世界平和を願っての造園なのでしょう。

いずれの造園活動も、テーマは国を超えて人と人とを結びつける多民族文化の交流・共存。シュミット・村木眞寿美さんのロンスベルグ城修復支援活動も同じテーマ。因みに、これらの造園事業には愛知県造園建設業界を中心とした造園関係者が全面的に協力し、愛知県から12人の造園技術者が派遣されております。

その中に、以前私が理事長職をお預かりしていた名古屋の同朋学園(同朋大学・名古屋音楽大学・名古屋造形芸術大学〈小牧〉・同朋高等学校・同朋幼稚園を設置・経営)の名古屋造形芸術大学の卒業生がいたのです。その名は櫻井靖敏君。彼は1974年三重県生まれ。1級造園施工管理技士。2001年櫻井造景設立。派遣技術者として2001年ドイツ・フルトインバルト、2003年スイス・グシュタードへ。誠に奇しきご縁。

今回の研修旅行の企画がほぼまとまった時点で成田照導さん宅を訪問し、ロンスベルグ城修復支援の動きや現地の状況についてお尋ねし、資料も拝借することができました。成田さんから得た情報をもとに、まずミュンヘンのシュミット・村木眞寿美さんとコンタクトを取りました。質問事項を整理しておいて最初は電話でお話ししました。近頃の国際電話はノイズやエコーもなく、声も明瞭で市内通話と全く変わりません。


IT談義あれこれ

しかし、意外と時間を要して電話料金もかさむため、お尋ねしたところEメールアドレスをお持ちだとわかり、以後はインターネット上のメールで連絡を取ることにしました。Eメールならば、質問事項も回答も全て記録に残るし、実際の送信時間は数秒ですむため通信費も9円でOK。それにも増して、ITの利便性はなんと素晴らしいことか。今回はIT技術の進歩がもたらす恩恵を十二分に実感することができました。

インターネット上のEメールでは、10,000㎞超の距離を瞬時に飛び越えて地球の裏側まで情報が伝達されます。それも発信基地へ赴く必要もなく、自宅のデスク上のパソコンのキーボードを叩くだけでできます。しかも時差関係なく。電話の場合は、例えばヨーロッパならば7時間(サマータイムの時期)の時差を考慮に入れてダイアルしないと、相手に迷惑をかけることに。もちろん不在の場合はかけ直さなければなりません。

ところが、Eメールならば相手方が夜中であろうと不在であろうと、送りっぱなしでOK。着信側は都合のよい時に開封すれば送られてきた通信文の読むことができます。のみならず、メールの送信者名をはじめ、宛先(氏名・Eメールアドレス)、送信日・時・分、件名も表示され、同時に全てがコンピュータ内のHD(ハード・ディスク:記憶装置)に記録保存されます。

傑作なのは、送信フォームの中の「宛先」の次に「CC」欄があること。CCは Carbon Copy の略字。薄葉紙と普通紙の間にカーボン紙を入れて、昔なら骨筆、今ならばボールペンで強く書くと「複写」ができる、あの方式。その昔ながらのカーボン・コピーの方式の略字を最新IT技術に採用するとは、何とも皮肉といいましょうか、ユーモアのある話。CC欄に同時に同文を送りたい相手先のEメールアドレスを打ち込んでおけば、カーボン・コピーされた、いや、カーボン・コピーよりももっとリアルなコピーが複数の相手に送信されるという機能。いわゆる「同報通信」が可能です。

Eメールのもう一つといいますか、最大の利点は文書の他に各種データが同時に送れるということ。例えば、写真・イラスト・地図といった画像データはもちろん動画も。それから数表やグラフなどの統計データ、あるいは設計図なども居ながらにして送信することができます。しかも、写真も図面も画質の劣化が全くありません。いわゆる「複写」などの光学プロセスを経ずにオリジナル・データのままネットを通してやり取りするために、劣化ということは全くありません。送受信のサイトの間が何千㎞、何万㎞離れていようとも。《次号へ続く/2006.09.2 本田眞哉・記》












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