さすがカトリック王国のシンボル。重厚なゴシック様式の大聖堂内。立ち並ぶ柱の垂直線と天井に至る曲線が“天”への誘いを表している感じ。一方、身近に目線を落とすと、そこにはローソクの焔の揺らぎ。数百から千に迫ろうかと思われるローソクが階段状にズラリ。洋の東西を問わず“献灯”は敬虔な気持ちを捧げるための重要なアイテムなのでしょう。
サン・シュテファン大聖堂の見学を終えてからは自由散策。約2時間後、午後4時半にオペラ座の裏近くに停めたバスに集合ということで解散。シュテファン・プラッツ(広場)から国立オペラ座の裏まで続く道はケルントナー通り。いわゆる「ホコテン」で、安心して歩ける長さ約500mの安全な通り。店を眺めて歩くだけでも楽しい。
道の両側には、クリスタルガラスなどの特産品を売る店や、靴や鞄のブランド品の店、ケーキの店などが立ち並んでいます。ショッピング・センターやデパート、ホテルなどもあり、とにかくにぎやか。特別なショッピングの計画を持たない私たちは、「銀ブラ」ならぬ「ケル・ブラ」。少々ブラブラにも疲れたので、コーヒーでも飲もうかとカフェへ。と、何とそのカフェはかの有名な「カフェ・ザッハー」だったのです。世界に名だたるザッハー・トルテの本家本元。コーヒーもおいしかったが、トルテの味は格別でした。
集合時間にはまだ余裕がありましたので、定番、現地ガイド紹介のスーベニール・ショップを覗いてみました。団員の皆さん、ウィーンが初めての方も多かったせいか、熱心に“商談中”。これといって目指す土産物もない私は、売り場を一巡して外へ。何気なく北の空を見上げると何と真っ黒な雲。これはまずい!とバスに駆け込んだら、ザーッと篠突く雨。
一旦ホテルに帰着して小休止。午後6時、バスは夕食のレストランへ向けて出発。レストランはウィーンの森の近くグリンツィングにある「BACH HENGL」。新酒のワインとビール、飲むほどに酔うほどに熱気ムンムン。そこへミュージシャンが入ってきて最高の盛り上がり。ヴァイオリンとアコーデオンが奏でるメロディーにあわせて歌ったり聞き入ったり。ご多分に漏れず日本の曲の演奏も。フィナーレは「知床旅情」。♪飲んで騒い~で…、大合唱のなか異国の夜は更けていきました。
●朝の散歩はシュタット・パルク
8月23日、ウィーン2日目の朝。私たちの宿泊ホテル「インターコンチネンタル・ウィーン」は、前にも触れましたが、地下鉄4号線のシュタット・パルク駅前。ヨハネス通りを隔ててシュタット・パルク(市立公園)の向かい側に立地。ホテルと同じブロックの南隣にはコンツエルト・ハウスとアカデミー劇場がありました。昨日の朝散歩中に発見。
朝食後家内と2人で、きょうの散歩はシュタット・パルクへと出かけたところ、団員の加藤龍明氏とバッタリ。3人で公園を散策することになりました。加藤氏は、かつて中日新聞社で鳴らした名記者。しかも文化系。旅に出ると独り探訪が好きとか。10分ほど歩くと、早くも予備知識を披瀝して「あれがヨハン・シュトラウスの像ですね」。そう、見覚えのあるシュトラウス像。大きなアーチの前に立ってヴァイオリンを弾く姿。逆光ながら金色に光って眩い。ウインナー・ワルツが聞こえてくるようでした。
待てよ、シュトラウス像はこんな金箔を押したような金色だったっけ…。20年前の記憶を辿ってみても黒っぽい姿しか思い出せません。これまた帰国後古いアルバムで検証してみましたが、やはりダークブラウンか黒色でした。やはりモーツアルト生誕250年記念ツアー客を意識して改装したのでしょうか。
因みに、私が初めてこのシュトラウス像と対面したのは公園の西側入口から入った時でした。トラムの走る「リンク(環状道路)」を散策中。今回は、南側から入り公園を縦断する形で歩いてきたのと、像の化粧直しのせいもあってかシュトラウス像が別のものに見えたのでした。公園内には、他にシューベルトやブルックナーの像もありましたが、これらは私の記憶通り。
ドナウ運河に注ぐウィーン川が、公園を縦断して流れていました。といっても水は全くなく、コンクリート張りの巨大なU字溝といった感じ。しかし、公園を外れて南へ遡ると巨大なU字溝も姿を消して暗渠に。そしてその延長先が、例のニューイヤーコンサートで有名なムジーク・フェライン(楽友協会ホール)に至るのです。楽友協会ホールの音響が素晴らしいゆえんは、ホールの地下を流れるウィーン川のトンネルによる反響効果とか。また、ホールの吊り天井にも音響効果の秘密があるとも。
《次号へ続く/2006.11.2 本田眞哉・記》