●ビデオカメラ今昔物語
ボロブドゥール談義が長くなってしまいました。話を元に戻しましょう。そうそう、映像(ビデオ)機器の重量の問題でしたね。前述のように、1980(昭和55)年代はじめのころテープデッキとカメラが別になっていましたが、やがて一体化しました。カメラの中にカセットテープが収められたのです。結果的にカメラは大きくなりました。VHSのカセットは長さが188㎜、幅が104㎜、厚さが25㎜。標準録画時間は120分。ベータの場合は少し小さく、長さが155㎜、幅が96㎜、厚さが25㎜。テレビ局が使う肩乗せタイプならカセットテープを入れてもさほど苦にならないでしょうが、手持ちのカメラでは重さはともかく嵩張って扱いにくかった記憶です。
次に現れたのがVideo 8(ビデオ・エイト)。文字通り幅8㎜の磁気テープがカセットに納められていて、ビデオカメラのテープ取り入れ口にカセットを挿入すると自動的にカセットを引き込んで、スプロケットや回転ヘッドの位置にピタリ合わせて収納。あとはシャッタ-ボタンを押せば撮影開始。もう一度押せば撮影が停止されます。カメラも非常に小型になり扱いが簡単になりました。このVideo 8のテープ・カセットはVHSやベータマックスのテープ・カセットよりグンと小さくなって、長さが95㎜、幅が82㎜、厚さが15㎜。嵩で見れば驚異的でVHSの4分の1にダウンサイズ。【写真左:1988年SONY_CCD-V50】
当然のことながら、ビデオカメラも小型になりました。とはいえ、現在のビデオカメラに比べれば3倍以上の容積。電池の嵩に至っては現在のそれと比べれば5~6倍でしょうか。一方、テープの録画時間は標準型1本でVHSと同じ120分。
電子技術の進歩は著しく、ほどなくHi8(ハイエイト)方式が出現。ビデオ・エイトの改良型。同じカセットサイズながら、とにかく画質がよいとの触れ込み。確かに画像の精細さは向上しましたが、テレビ放送のスタンダードとハイビジョンほどの差はなく、飛躍的改良とはいえませんでした。ただ、カメラは改良型が次々発売され、多機能化、小型化が進みました。
メーカー間の過激な競争のお陰?で技術革新はとどまるところを知らず、次に現れたのがデジタル8㎜ビデオ。DV8の名の下に、ミニ・カセットテープはHi8の約半分、66㎜×47㎜×12㎜。画質は最高ハイビジョンスペック。何よりも嬉しいのはダビングしても画質がほとんど劣化しないこと。編集して作品に仕上げた時にその威力を発揮します。アナロクの場合は、ダビング3回目となると色のにじみや輪郭のボケが現れて不快なことこの上なし。【写真右:2007年SONY_HDR-SR8】
更にさらに技術革新は進み、2008年の今や記録媒体はDV磁気テープのみならず、DVDディスクやハードディスク内蔵カメラ、そしてスティック型のメモリーチップにまで拡大しています。やがて光ディスクの録画方式を備えたビデオカメラが発売されることになるかも。カメラの小型化もさらに進み手乗りサイズも珍しくなくなりました。
●動画編集システムも長足の進歩
一方撮影済みの動画の編集システムの進歩も急速でした。ごく初期は、カメラとテープデッキを3ピンのVAケーブルでつないで、ダビングしながら必要な部分を手動で切り継ぎして1本のテープに纏めるという方式。そのあと売り出されたのがマーカーを打ち込んだ部分だけ自動的にダビングできるという機械。エフェクト機能も種々搭載され、フェード・イン、フェード・アウトからクロマキーに至るまで、当時としては凄い機能が搭載され、プロ並みの編集ができるとの触れ込みでした。【写真左:1989年SONY_VX-Z10000】
そうした高機能編集機も数年で陳腐化し、3年ほど前からはパソコンを使って編集する時代となりました。編集ソフトも民生用の優れものが開発されました。私が使っているのはAdobe社のPremiere Pro 1.5。編集はいとも簡単。まず、ビデオカメラで撮った映像データをパソコンに取り込みます。次にPremiere Pro 1.5を立ち上げ、映像フィルを読み込みます。
次に、そのファイルを開き編集モニターで見ながら必要なしシーンをドラッグしてタイムライン上にドロップ(貼り付け)します。同様な操作を繰り返して、カメラに収録されたデータの中から必要な部分を切り取って、つないで行けば1本の作品ができあがるという寸法。もちろん音声も動画に付随して編集されます。
動画は、基本的にはフィルム映画と同じで、1秒間に何枚かの静止画を映して構成されます。ビデオの場合は30フレームの静止画で1秒間の動画が映し出されます。Premiere Pro 1.5では秒単位はもちろんのこと、1フレームずつカウントして任意の長さでシーンを切り取ることができます。したがって、音声も「て・に・を・は」単位で切り取ることができ、タイムラインの別のトラックを利用すれば、音声と映像を異なったシーンで組み合わせることもできます。【写真下:編集中のパソコン画面・下段がタイムライン、上段左からファイル・リスト/ファイル・モニタ/タイムライン・モニタ】
つなぎ合わせてタイムラインに並んだ映像と音声に「エフェクト」を付け加えると、作品が一段と精彩を放ちます。例えば、切りつないだ2つのシーンの間に「ディゾルブ」のエフェクトをかけると、前のシーンから後のシーンに変わる時、グラデーション進行で場面転換ができます。グラデーションのほかにモザイクや三角形や円形などを使っての場面転換も可能です。これらはほんの一例で、そのほかにも数多のエッフェクト機能が利用できます。
タイムラインのトップにメイン・タイトルとサブ・タイトル、最終シーンの後にエンド・タイトルを付けるとラインは一応完成します。タイトル作りも今は簡単。昔は紙にタイトル画と文字を書き、それをビデオカメラで撮影して作ったものです。今は画像編集ソフトを使って、ビデオ・フレームのサイズに合わせた背景色を塗りつぶし、その上に好みのフォントと色で文字を書けばOK。タイトルの映写秒数はタイムライン上で簡単に伸び縮みが可能。
最後に音楽(BGM)とナレーションを付加すれば完成。とはいうものの、タイムライン上にできた作品はあくまでもバーチャル。タイムライン上のシーンは、最初にパソコンに読み込んだ動画ファイルとリンク状態を示しているに過ぎず、動画ファイルそのものではりません。実体のある映像作品にするには「書き出し」をしなければなりません。ハードディスクでもよいしDVDでもよろしい。DVDに焼けばどのプレーヤーでもシネマとして上映できます。
《次号へ続く/2008.9.2 本田眞哉・記》