法 話

(198)ウォーキングの効用

  

 

 

   

 


大府市S・E氏提供



  「ウォーキングの効用」



 

夕刻6時を挟んで30分間、充分味わいながら夕食を戴くのが日課。晩酌はしないので時間は充分。夕食を済ませたあとはウォーキング。下は短パンに履き替え、上はTシャツを着用。ウォーキング・シューズで足下を整えて、さぁー出発だ。山門を出て…といっても、現在当山の山門は建て替え工事中、通用門を通って西へ。軽自動車が辛うじて通れる数百年前に開かれた狭い道。防衛のためか、クランクの連続。数分で緒川小学校のキャンパスへ。

校門前から南西方向へ向けて緩やかな上り坂、幅1mほどの歩道を歩きます。県道知多刈谷線に入って三つ目の信号「猪伏釜」に到達。この辺りが知多半島東部丘陵の“尾根”になりましょうか、最高地点のようです。自坊からの標高差は20mほど。信号待ちしている十数台の車を尻目にここで南に折れ、バイパスを急降下。カーブした歩道を300mほど進むと「於大公園西」の信号。ウォーキング・コースはこの信号で左折。

左折すると間もなく「乾坤院」の総門の前へ。乾坤院は徳川家康ゆかりの寺。家康の生母「於大」の方は、享禄元(1528)年、尾張国知多郡の豪族・水野忠政とその妻・華陽院(於富)との間に、忠政の居城・緒川城(愛知県知多郡東浦町緒川)で出生。父・水野忠政は、緒川からほど近い三河国にも所領を持っていたため、三河で勢力を振るっていた松平清康の求めに応じて妻・於富の方を離縁して清康に嫁がせました。

松平氏とさらに友好関係を深めるため、天文101541)年に於大の方を清康の跡を継いだ松平広忠に嫁がせました。天文111226日(西暦1543131日)、於大の方は広忠の長男・竹千代(後の家康)を岡崎城で出産。水野忠政は天文年間、三河国妙心寺に薬師如来の銅像を奉納して竹千代の長生きを祈念したとも。なお、於大の方の出生地・東浦町は彼女を記念して緒川の地に「於大公園」を整備し、毎年「於大まつり」を催行。

文明71475)年創建といわれ、540年余の歴史を誇るこの宇宙山乾坤院、昨平成282016)年341450分ごろ本堂から出火。木造の本堂と座禅堂を全焼し、玄関棟と山門、堅雄堂の一部を焼損。人的被害はなかったものの、町文化財5点のうち3点に被害を受けたとのこと。なお、当寺院が保有する愛知県指定有形文化財は名古屋市博物館に預けてあったため、被害を免れたと報じられています。

因みにこの出火時、私は自坊の書斎で原稿を執筆していました。34日の午後3時ごろでしたか、消防詰め所のサイレンがけたたましく吹鳴。寺務所2階の書斎の窓(当山境内地は河岸段丘上に立地しているため、段丘下の街の5階に相当)から東・南・北方向を見渡しても炎は疎か煙も見えません。ボヤ程度で鎮火したのか、あるいは西面の丘陵の背後の出火か。 その後、眼下を通る消防車もないため、再び机に戻って原稿執筆を続行。

夕刻、名古屋在住の大学時代の友人から電話。「テレビニュースで視たが、君んとこの近くの何とかいうお寺から火が出て焼けたなあ、君んとこは大丈夫か?」「エッ、ホント?」 早速テレビを点けてみましたが、ニュースの時刻以外では報道されるはずがありません。定時になってローカルニュースに火災画面。とはいっても、見慣れた大本堂の姿は焼け落ちて見当たりません。チャンネルを替えてみると、どの局でも大きく取り上げていました。

火災後23日して、ウォーキングの折りに現場に立ち寄ってみました。後片付けが終わった火災現場は、きな臭さは残っていたものの、静かな佇まいを見せていました。あれから15か月余、今現場では復興作業がさぞかし進んでいるだろうな…と目の届かない復興現場に思いを馳せながら、総門前を通り過ぎました。寺域の周りを大樹で囲まれた乾坤院、寺域周辺の道に歩を進めても、火災の痕跡は全く目に留まりません。

昔からやーまのなーかの けんこんいんと唄われた乾坤院。私の子ども時代も人里離れた山の中でしたが、今では門前に信号機が立ち車がひっきりなし。その県道バイパスの歩道を東へ向けて歩を進めます。この付近のバイパス、以前は田んぼの中。今では内科・外科・歯科・薬局と医療関係が軒を連ね、最近新たに広い駐車場を備えたコンビニがオープン。700mほど進むと「東浦役場前」の信号。ここで旧道と合流。道幅は広くなり、町役場を背後にしてなだらかな下り坂の一直線。

ファミレスやファーストフード店、コンビニや麺類食堂はいうに及ばず、電器店・金物店・理髪店が道の両側に立ち並んでいます。そんな繁華な中に複数の学習塾も。300mほど進むと旧国道366の「東浦役場東」の交差点。以前この交差点の南西角にも医療機関がありましたが23年前に閉鎖。1,000㎡もあろうかという空き地、今や草っ原。この交差点の東側、南・北両角にもファミレス。平日はそれほどでもありませんが、土・日は駐車場が満杯。ご繁昌で結構なこと。

ここからは道幅がグンと広がって車道は4車線。600m先の国道366バイパス「東栄町」交差点まで刈谷方面へ向かって一直線。私のウォーキング・コースは、この「東栄町」で左折、イオンモール東浦前の国道366バイパスを北進。500mほど歩くと「北新田」の信号。ここで左折してイオンの「エンジョイライフ館」を経てJR武豊線の「緒川駅」へ。緒川駅からは旧郷中を通って自坊へ。通夜などの法務や悪天候の日を除いては、ほぼ毎日このコースをウォーキング。

以上が私のウォーキング・コース。歩行距離は全長5㎞、所用時間は50分。時速6㎞。かなり速い速度。30年ほど前に受けた医師の指導を真面目に守っているため。当時の医師の指導では、糖尿病は完治しません、薬もさることながら運動をして進行を止めなさい、ということでした。ウォーキングが効果的だが、犬の散歩はダメ、“速歩”で歩きなさいとのご指導。私はこのご指導を忠実に守って、血糖値の悪化を辛うじてキープ。ウォーキングの効用でしょうか。

 

合掌

《2017/9/1前住職・本田眞哉・記

 

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